2024年4月20日(土)

Wedge REPORT

2014年2月14日

 民主党政権が「2030年代原発ゼロ」を閣議決定できなかったのは、極言すれば国内のプルトニウムの処置を国際社会に示せなかったからだ。

 小泉氏はフィンランドにある、高レベル核廃棄物の地層処分場オンカロを訪れ、「日本で処分場の目処をつけられると思う方が楽観的で無責任」と述べた。それなら約40年間の運転で既に大量に存在する核廃棄物をどうするつもりなのか。

 実は、プルトニウムを効率良く燃やすことのできる高速炉の技術を、日本は世界最高水準のレベルで有している。高レベル核廃棄物が安定的になるまでに要する「10万年」は恐怖とともに語られるが、地層処分が嫌なら、核廃棄物の半減期を短縮する核変換技術を実用化するしかない。つまり、脱原発のための障害は、原子力技術の向上によってしか取り除くことができないのだ。そして、どうせ向上させるのならなぜ利用しないのかという当然の問いを招く。

 脱原発の問題は、これらの技術開発や、福島事故の後処理、50基超の原発の廃炉にかかる費用(十兆円の単位には上る)をどう捻出するかにある。原発を運転するならその利ザヤを充てることができるが、原発即ゼロは50基を超える原発が全くカネを生まないゴミに変わることを意味する。細川・小泉連合は原資に言及しなかった。

 一言でいえば、脱原発も原発推進も負けたのだ。両派に共通している「無責任さ」への怒りが、低投票率と、前評判第1位候補の歓喜なき消去法的勝利に表れている。

 民意が致し方なく選択させられる「脱原発依存」という曖昧戦略は、次世代へのツケ回しが甚だしい。

 電力会社は、原発を止める法的根拠はないのに、原子力規制委員会の新適合基準審査が完了するまで再稼働しない。原発推進の最大のリスクである事故リスクを投げつけられた規制委は時間を浪費するばかり。責任から逃げる政治家・官僚が生んだ曖昧戦略の結果が、資源国に垂れ流される毎年数兆円もの燃料費である。

 中部電力浜岡原子力発電所を見学に訪れた、近畿地方の私立中学生の集団に同行する機会があった。彼らは小泉発言を受け、岐阜県瑞浪市の地層処分研究施設も見学し、原発の長所短所を自分の頭で考えようとしていた。母数が小さいので統計として意味はないが、原発への賛否を尋ねると、過半数が維持・推進だった。「いまの生活を維持するために、安全を確保して原発を使って欲しい」と一人が言った。

 原発ゼロを掲げた2候補への支持率が若年層で低く、高年齢層で高いのは決して偶然ではない。

◆WEDGE2014年3月号より










 

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