Wedge REPORT

2014年2月14日

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 キックスケーター開発のチームの一員である、金属切削業・カシワミルポーラの柏良光社長はこう言う。「私たちはBtoBの仕事、図面のある仕事に慣れ切ってるから、新しいこと、特にBtoCの仕事にどう取り組んだらいいかわからない。横田さんの話を聞いていると勉強になる」。

倒産からの復活 「配給食」はいらない

 大手の言うことをずっと聞いてきた父。求められた設備を入れ、コストダウン要求ものみ込む。原価と売価が合わなくても断らない。それでも言うことを聞いて注文さえもらえれば食べていくことができた。横田はそれを「配給食」と呼ぶ。

 「新興国が圧倒的に安いコストで競争を仕掛けてくる時代に、もう、配給食はないんですよね。それをわかっていながら乗り越えられなかった。大手のせいではなく、経営者である自分の責任」

 協力工場に優先して仕事を回すのが父のやり方だった。倒産寸前も、1個しか来ていない注文を20個で協力工場に発注しようとした。それを止めた横田に父はこう言った。「あの人が食べられなくなったら、おまえ、どうするんだ」。もう自分たちが食べられなくなっているのに……。

 これは経営ではないと反発を覚えた横田だが、倒産からの再起を遂げたいま、父に対して尊敬の気持ちも抱いている。そんな横田の出した答えが、冒頭の「パン屋」なのだろう。

 昨年6月、首相官邸で開催された「再チャレンジ懇談会」に招かれた横田は、安倍晋三総理の前で、中小企業の相談の場の充実と連帯保証制度の大変さを訴えた。

 「会社を倒産したことで、お金には苦労してますか?」

 そう総理に聞かれた横田はこう答えた。「破産して5年。銀行からはまだ借りられません。クラウドを使うなど工夫しています」。

 稲田朋美担当大臣に、色紙に一言求められ、少し考えてこう書いた。「この人のためにという目的を持ったモノづくりを大切にしたい」。これは、7年前に小誌の取材を受けた時の横田の言葉だ。「官邸に行く前に記事を読み返したら、いまやっていることがぶれてない、と思えて嬉しくなって」。そう言った横田の表情はすがすがしかった。


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