WEDGE2月号では「グーグルに食われた日の丸ロボット~リスク取れない日本の官民」と題して、昨年グーグルによって買収された、東京大学発のロボット開発ベンチャー「SCHAFT(シャフト)」を特集。その番外編として、TomyK代表、ACCESS共同創業者の鎌田富久氏へのインタビュー記事をお届けする。
昨年末、グーグルによって買収されたロボット開発を手がけるベンチャー企業「SCHAFT(シャフト)」。東京大学の助教らが中心に設立した同社の起業からイグジット(投資回収)までを支えたのが、元社外取締役の鎌田富久氏だ。自身も東大在学中にベンチャー企業を立ち上げ、最近はベンチャー起業の支援を行う鎌田氏は、「スタートアップ・ブースター」の役割を担う伴走者が経営者に必要だと説く。先端技術を強みとする技術ベンチャーに必要な秘訣とこれからについて聞いた。
――鎌田さんは大学発ベンチャーの支援をされていますが、エンジェル投資を行うだけでなく、「スタートアップ・ブースター」としての取り組みをされています。「スタートアップ・ブースター」とはどのようなことをするのでしょうか? また、なぜ今それが必要なのでしょうか?
鎌田富久氏(以下鎌田氏):「スタートアップ・ブースター」というのは、僕が作った造語です。ロケットのブースターと同じで、経営者と一緒に立ち上げて伴走して、一緒に飛び上がる。投資家がエンジェル投資をして卵を温めるという意味で、アメリカではよく「インキュベーター」という単語を使いますが、温めるだけではだめで、育てるところまでやるのが重要と思って始めました。
僕が学生で起業をした30年前、学生発ベンチャー企業はほとんどなかったのですが、最近増えて来ています。東京大学にも産学連携本部があるし、支援プロジェクトもあります。資金と場所を出すところは徐々に出てきています。
ACCESSを退任して、もう一度若い人たちと事業をやりたいと思ったときに、(起業したいという学生の)話を聞くと、情熱もあるしニーズもありそう。ただ、起業して事業をするには、それ以外の部分も必要です。学生発ベンチャー企業の経営者は、ビジネス経験がありません。会社の作り方からわからない。会社で教育されてきたわけではないので、自分たちでゼロからやらないといけない。お金があってもベンチャーがうまくいかない理由は、そこが足りないからだと思いました。まさに、自分自身が過去に苦労したことでもあります。そういう、技術と情熱はあるが、これがないと事業が立ちあげられない、というところを一緒にやる役割が必要と思い「スタートアップ・ブースター」を始めました。