2025年12月6日(土)

冷泉彰彦の「ニッポンよ、大志を抱け」

2024年12月13日

トランプ氏と安倍氏の信頼関係

 日本では、支持者以外からは保守派のイデオローグのように見られていた安倍氏であるが、アメリカでは特に安倍氏の第二次政権におけるトランプ氏との関係については、かなり重要視されていた。まず、度重なる私的な会談やゴルフなどを通じて、トランプ氏と安倍氏の間が個人的な信頼関係で結ばれていたであろう、という強い印象がある。

 その一方で、特に2018年のカナダのケベック州シャルルボアで行われた先進国首脳会議では、一方的にパリ協定からの離脱を宣言するなど、主要7カ国(G7)の結束を壊そうとしたトランプ氏に対して、安倍氏が残りの6カ国を代表して反論したことは、アメリカでは非常に有名である。「ふんぞり返る」トランプ氏に対して、真剣に翻意を迫る安倍氏とドイツのメルケル首相(当時)の写真は、間違いなく21世紀の世界史に残る、そのぐらいアメリカの政治通には深く記憶されている。

 では、そのサミット以降、安倍氏はトランプ氏から遠ざけられたのかというと、決してそうではなく友情は続いていたし、それゆえ日米関係も安定していた。今回の安倍昭恵氏の訪問は、そうしたエピソードの続きとして理解されているフシもある。

垣間見えるトランプの人間性

 以降は、筆者の感想になるが、もちろん、アメリカの政治通は安倍昭恵氏が日米関係の主要なメッセージを携えて行くとは思っていない。あくまで私的な訪問という理解であろう。けれども、このニュースに対しては、保守・リベラルを問わず、基本的には好感を持っていると思われる。

 トランプ氏は、世論の奥底にある感情を、ポジティブであろうがネガティブであろうが、政治化するタイプの政治家である。また、移民追放政策に見られるように冷酷な面も持っているし、何よりも敵対する勢力には厳しい。

 そのトランプ氏が、故人となった安倍氏とは明らかに温かい交流があり、その昭恵夫人を夫妻で歓待するというのは、いい意味で社交的であり、人間的な温かみを感じるニュースである。そこに、ある種の救いを感じるということかもしれない。

 またトランプ支持者は、安倍氏には強い好感を抱いている。そして今回の昭恵夫人の訪問も歓迎している。このことは間違いないわけで、そのような印象や感情を潜在的な日米関係維持への文脈に使うことは可能と思われる。


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