2025年12月5日(金)

World Energy Watch

2025年1月17日

 ネバダ州は、約85%が連邦政府所有地であり、太陽光発電に利用可能とされる西部の3100万エーカーの内1200万エーカーを占めている。

 田舎に住む住民からは、「都市部に電力を供給するため景観が失われる」「動植物の多様性が失われる」「ラスベガスのホテルから眺めた風景がパネルだらけになって良いのか」など観光産業に影響があるとの声があり、「温暖化という環境を守るために、環境が破壊されるのは理解不能」との意見もある。

 環境以外に経済的な問題もある。建設期間中には大量の地下水が使用され、貴重な地下水が枯渇するとの指摘もある。

 砂漠の地表を剥ぐと、砂塵が舞い被害が生じる公害もある。州内で太陽光発電設備工事を行った企業が砂塵を発生させ、22万ドルの罰金を科せられたこともあった。

 ネバダ州は、リチウムなどの資源にも恵まれているが、太陽光設備が設置されれば、その下にある資源を採掘する機会が失われ損失も生じる。

 トランプが次期大統領に就任すれば、バイデン政権がインフレ抑制法(IRA)の下再エネ事業に用意した補助金、支援制度が見直され、再エネがスローダウンすると期待する住民もいるが、トランプは見直すのだろうか。

米国は世界第2位の太陽光発電大国

 米国は中国に次ぐ世界第2位の太陽光発電大国だ(図-2)。設備容量は伸び続けている。昨年の設備導入量は約4000万kWと推測されている。

 昨年の大統領選時のハリス副大統領との討論会では、トランプは次のように太陽光について批判的に発言している「私は太陽光の大ファンだが、設備は砂漠の土地400、500エーカーを必要とするので、環境に良くない。ウサギにも害を及ぼす可能性がある」。

 トランプが前回大統領に就任した17年には、太陽光発電設備の設置許可発行に遅れが生じたと報じられた。

 今も、たとえばネバダ州では太陽光中心に再エネ設備の許可申請が100件以上提出されており、審査が遅れ気味の地方政府は連邦政府に援助を求めている。 

 次期トランプ政権は援助を見送る可能性があるかもしれないが、前回の就任期間の導入量の推移を見ると、オバマ政権時代から大きな変化はないので、許可発行が仮に遅れてもその影響は軽微だろう(図-3)。

 加えて、太陽光発電設備導入量は共和党地盤の州に多い。24年10月の太陽光発電量上位10州の内6州は共和党の地盤だ(表-1)。

 トランプは就任後IRAのクリーンエネルギーに関する補助制度を見直すとしているが、見直し対象に太陽光、風力発電を含めない可能性も高い。共和党支持者が多い地域を助ける政策を捨てはしないとの予想だ。

 しかし、補助制度に関し「中国ファクター」が登場してきた。トランプの判断に影響を与える可能性がある。


新着記事

»もっと見る