2025年12月6日(土)

お花畑の農業論にモノ申す

2025年1月21日

研修会の現場から聞こえる声

 筆者は都道府県や市町村からスマート農業の研修会の講師を依頼されることがあり、その際にはチャットGPTなど生成AIの利用方法などについても説明している。

 このような公務員や農家対象の研修会で、冒頭、「生成AIを日常的に使っていますか?」などと聞くようにしているが、20人から30人の研修参加者のうち、手を挙げる人はたいてい数人に留まる。

 その理由について、都道府県の公務員の職場のパソコンなどは、セキュリティが厳しく、インターネット自体の利用を制限されていることが多いという。農家を指導する立場の方々の利用がおぼつかない状況であれば農家への普及もなかなか進まないのも頷ける。

 ただし、農業指導者や農家などから最もよく聞くのは「生成AIを使ってみたが、農業に役立つ回答が得られなかった」という意見だ。

日常生活で普及している生成AI

 日本では英会話を勉強するのに、生成AIが急速に普及している。筆者もチャットGPTの有料会員になって毎日のように英会話の練習に利用しているが、こちらの文法上の間違いを指摘してくれるし、日本人が苦手な仮定法なども詳しく説明してくれるなど教え方が上手である。人間の先生とどちらが良いかと聞かれた場合、返答に苦慮するレベルになっている。

 また、業務で作成したプレゼン資料をチェックしてもらい、「箇条書きを表形式にした方が良い」など具体的な改善点まで提案してくれる。さらに仕事などの人間関係で困っている場合など、その経過と問題点を詳細に説明すると、的確な解決法も提案してくる。

 このように、生成AIは自分だけの相談相手になってくれるし、音声でもかなり正確にコミュニケーションを取ることが可能である。

 一方、調べものをするのに従来はグーグルなどで何度も検索していたことを、アメリカのベンチャー企業が開発した生成AIのPerplexityを使えば、質問に回答し、複数の文献の出所なども一度に教えてくれる。このように業務や日常生活で普通に生成AIを活用できるようになってきている。

生成AIは農業現場の方々の相談相手に

 では、なぜ生成AIが日本の農業で「役に立たない」と言われているのか。

 最近はスマート農業の普及で作業記録を専用アプリに入れている農家が多くなっている。そうした用途で農業界に最も普及しているソフトウエアの一つがアグリノートだ。

 アグリノートは、圃場の地図や写真を使いながら日々の農作業の記録、農薬の使用頻度など農業管理に必要な情報をクラウド上で一元的に管理ができる。従来は、この集められた情報をエクセルなどで集計するのが一苦労だった。チャットGPTを使えば、簡単に計算できるし、分析結果に基づいた提案もしてくれる。

作業日誌の計算例。一つひとつの入力など、手間がかかる 写真を拡大

 また、新規就農を希望しているサラリーマンが就農するための方法をPerplexityで聞くと、いくつかの効果的な新規就農指導のアプローチを提案するなどの回答とともに参考文献も示してくれる。回答に関する疑問点は文献に直接当たることも可能だ。

Perplexityの利用例。参照文献が表示される

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