「生成AIを使ったことありません」。農業現場に行ってよく聞く言葉である。また、「チャットGPTが出始めた頃に使ってみたけど、回答に間違いが多いので使うのを止めた」との声も県職員らからよく聞かれる。
生成AIはデータから学習したパターンや関係性を活用し、テキスト、画像、動画、音声など多岐にわたるコンテンツを新たに生成できる。2022年11月、米OpenAI社による「ChatGPT」の公開により、その高度な文章生成能力によって生成AIに対する関心が一気に高まった。
その注目度に比較し、日本は、中国、アメリカ、イギリス、ドイツに比べても生成AIの個人利用率が10%以下と極端に低い。企業利用の割合も全企業の半数以下で、中国、アメリカ、ドイツの7割から8割に比べるとかなり小さい(2024年版情報通信白書参照)。
その中でも、日本の農家は平均年齢が70歳近くの高齢で、スマホを使いこなせていない方も多いなどの理由から、生成AIの利用はさらに低調と容易に想像が付く。
農業でもICTの開発と利用は進んでおり、代表格として農作業の記録を集約しておくソフトがある。代表的なアプリで3万人が利用していると言われているが、多くが若年層で日本の農家全体から見ると一部に過ぎない。
農業に生成AIは役立たないのか――。現状の農業での生成AI利用を見ながら、日本農業の生成AI利用に足りないものや課題を見ていきたい。