2025年12月6日(土)

お花畑の農業論にモノ申す

2025年1月21日

 さらに、温室の気温、湿度、二酸化炭素(CO2)等の環境データの管理システムから入手できるデータを添付し、次の作業を質問すると即時に分析し、何をしたら良いかの提案まで行ってくれる。

Copilotの利用例(質問データ) 写真を拡大
Copilotの利用例(回答)写真を拡大

 このような生成AIの分析結果や回答結果を農業の専門家に見せると「技術者として初歩的な回答レベルで生成AIの能力はまだまだだ」と指摘されることが多い。

 このように、日本の農業現場では、生成AIの活用事例はあるものの、ネガティブな面に焦点が当てられることが多い。利用は限定的との印象だ。

 ただ、それは生成AIという技術の問題ではなく、記憶させるデータが足りないといった面が大きな要因と言える。今後、よりデータが収集されたり、生成AIの技術開発が進んだりすれば、便利になり利用の可能性も大きい。問題はそうした課題と可能性を農業現場が意識できているか、と感じている。

生成AI利用拡大に向けて

 農業界では、農研機構が2024年10月に「国内初の農業特化型生成AIを開発」とプレスリリースしたことが話題になっている。一般に公開できない情報であっても、利用を特定の地域に限定して生成AIの学習情報として蓄積していき、生成AIの回答の正確性を高める試みである。

 産地や都道府県独自の情報は極力公開したくないという状況下では意義のある試みと理解できる。ただし、このような動きは、現時点で農業情報は各組織に固有に蓄積され、公開すべき情報のオープン化が遅れていることを容認することにつながるのではないかという危惧がある。

 一方、農業以外に目を向けると、ある都道府県が手順を決めた上で、自治体をあげて生成AIの利用を推進するため、情報を積極的に公開しようとする動きがある。この例では、生成AIが学習するための元データを増やし、全国の方々が生成AIを使った場合にこの自治体へ多くの情報を提供できるようにし、町の魅力をPRすることを目指している。この自治体の関係者は、公開情報を多くすることが生成AIの精度を上げる最善の策と理解しているのである。

 筆者は長らく農業関係の仕事に携わり、公開しても良いと思われる情報が組織内にとどまっているのを見てきた。最近はほとんどの情報が電子化され、農家などに有用な情報が多いにもかかわらず、この状況はあまり変わっていないようだ。組織固有の情報なので公開できないとの組織優先の考えに阻害され、一般公開されない情報が多くある。

 たとえば学会誌などの論文も印刷物にはなるが、公開しても問題のないような古い情報ですら、ネット上で公開されていないこともある。これは専門的な技術情報を欲している農家にとって不幸なことである。


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