しかし、米国経済を今日支えているのはマスクやラマスワミ等の移民の成功を含むハイテク分野であり、インド系を中心とする大量のハイテク技術者の流入である。その前提として、グローバリゼーションの下での自由なハイテク製品やサービスの市場がある。
トランプは関税措置で製造業の復活を実現できると言っているが、それは世界的な貿易戦争を招き、ハイテク産業にもネガティブな影響を及ぼし、本来、自由市場の下で小さな政府を良しとする共和党主流派の世界観とも相いれないはずである。従って、トランプの関税措置も恐らくは特定国或いは特定分野を狙った段階的な対応となり、国内へのインフレへの影響や株式等市場の動向、世論の反応などを見つつ段階的に対応していくことになり、MAGA派とハイテク派の決定的対立にはならない可能性もある。
安全保障問題への影響は?
各派閥は、何れもトランプのカリスマを利用してそれぞれの目標を達しようとしているので、その面ではトランプに対する忠誠心の競争ともなり、各派間の対立はトランプにとっては悪い話ではなく、その時々に最も自分の利益になる主張に乗るということになるのであろう。
トランプのマスクに対する信頼感に鑑みると、マスクが安全保障問題に影響力を持つ可能性も排除できず、南シナ海や台湾問題、在韓米軍、日米安保にどのような見識を持っているのかも不安点である。マスク自身は、かつてプーチンとも接触があり、テスラの中国ビジネスの関係で台湾に対しては冷淡であることははっきりしている。東アジアや欧州の安全保障問題について米国の関与をビジネス的な基準で判断する傾向が懸念される。