Economist誌1月4日号の社説が、MAGA派と共和党主流派に加えて、新たにイーロン・マスクなどのハイテク企業家が第3のグループとして政権を支えることになるトランプ体制は、グループ間の考え方の違いが政策実現の足かせとなり不安定な連合体となるが、良い面もあるかもしれないと論じている。要旨は次の通り。

イーロン・マスクをはじめとするハイテク界の大物たちは、高度な技術を持つ移民の受け入れをめぐりMAGA派と非難の応酬をしている。これはビザに関する些細な喧嘩のように見えるが、実際はより深い亀裂の兆候であり、初めて政権に参加するハイテク派の世界観がMAGA運動と著しく対立していることを示している。こうした緊張がどう解消され、どちらが優位に立つのかは、今後4年間の米国経済と金融市場に大きな影響を与えるだろう。
トランプは第1期目と同様、矛盾した目標を掲げている。経済政策チームは、反貿易、反移民、反規制であり、熱狂的な支持層を持つ。共和党主流派は、主に低課税で小さな政府を推進する人々だ。しかし今回は、シリコンバレーのハイテク・ブラザーズという、新たな新派閥が参加しさらに不安定な連合体となる。
長年ワシントンを敬遠してきたハイテク企業家の政権参加は米国政治にとって新しい試みだ。今や、ハイテク企業は、政府の影響力を行使し破壊する対象と見なしている。
理論上は、これは米国に利益をもたらすだろう。他のチームと同様、ハイテク関係者は、お役所仕事を削減しイノベーションを発展させて米国の経済的、技術的強みを先鋭化したいと考えている。その経済的、戦略的重要性を考えれば、専門家に助言を求めるのは良い考えだ。
しかし、これらを実際に実現することは別の話だ。ひとつの問題は、ハイテク関係者とMAGA派にとり、「アメリカ・ファースト」の意味が異なることだ。MAGA派が、製造業全盛時代への回帰を含む過去のビジョンの回復を望んでいるのに対し、ハイテク派は将来を見て、進歩を加速し、社会を破壊し、MAGA派が憧れる世界を遥か彼方に置き去りにしようとしている。
こうした対照的なビジョンは、政策論争にも反映されるだろう。 MAGA派は、米国人の仕事を移民が奪うことを恐れているが、ハイテク派は国籍に関係なく最高の人材を欲しており、政府を疑うリバタリアン的な傾向を持ち、企業の統制を嫌う。
どちらのグループも中国をライバル視し(マスクにとっては自動車を製造・販売する場所だが)、MAGA派が外国人は貿易を悪用して米国をだますと考えるのに対し、ハイテク派は人材、資本、慣習の流れから利益を得ている。仮にハイテク企業が第一ラウンドの物品に対する関税を免れたとしても、全面的な貿易戦争になれば、その企業が提供するサービスも巻き込まれる可能性があり、このような矛盾と衝突は、ハイテク派の目標達成を困難にするだろう。
内輪もめ、不手際、自己欺瞞が重なれば、反発を招き2期目のトランプの足かせとなるかもしれない。