就任演説でNATO加盟国への敵視を言わなかったこと、ルビオ氏が与野党満場一致で国務長官に承認されたこと、就任式に中国国家副主席の韓正氏が列席したこと、こうした動きがこの就任日の一日で起きたことの事実は重い。この3点を総合すると、トランプ氏の政策の中で最も懸念された「外交」について、少なくとも現実との接点が保たれていることが感じられるからだ。
日米関係は安泰ではない
では、これで石破茂政権も安心していいかと言うと、そこは簡単ではない。トランプ氏は、団塊世代の代表として、日米貿易摩擦を肌感覚で知る世代だ。従って心理のどこかには、日本への反感というのが透けて見えることがある。それでも、第一次政権の際には、安倍晋三氏との個人的な信頼関係から、日米同盟への見直しは行わなかった。
そんな中で、今回のトランプ政権がNATOや中国との関係悪化を望まず、現実との折り合いを意識したとして、自動的に日米関係も現状が維持されるとは考えないほうが良い。例えばだが、日本製鉄のUSスチール買収案件に関しては、当事者による法廷闘争を淡々と戦うのが良く、外交課題にするのは得策ではない。また、石破首相は、十分な準備もせずに首脳会談を焦って墓穴を掘るようなことでは困る。
