2025年2月7日(金)

冷泉彰彦の「ニッポンよ、大志を抱け」

2025年1月22日

 第47代合衆国大統領にドナルド・トランプ氏が就任した。当日のワシントンは晴天であったにもかかわらず昼の気温が摂氏マイナス5度という寒波に見舞われていた。この事態は予想されており、就任式の式典会場は恒例となっていた議事堂前の屋外ではなく、議事堂内に変更されていた。

 前夜には、近隣の大規模屋内競技場「キャピタルワン・アリーナ」で、支援者を集めて就任前夜祭を行ったトランプ大統領は、同じ会場でパブリック・ビューイングを開催。熱心な支持者はこちらで「声援」を送っていた。

トランプ大統領の就任演説には、「現実路線」の外交方針をにじませた(代表撮影/ロイター/アフロ)

 そんな中で、トランプ大統領は8年前に第45代大統領として就任したときと同じように、憤怒の表情をたたえつつ政敵への闘争宣言とも言える内容で就任演説を行った。1つ驚いたのは、演説の中で「インフレ退治」を約束したことであった。移民追放に輸入関税の強化というトランプ氏の公約は、それだけでも物価押し上げの要因となりうる。さらに、トランプ時代への期待感から株価や景気が加熱している中では、その実現は難しい。

 トランプ氏は「政府の過剰消費を止める」のと「化石燃料をガンガン掘ってエネルギー価格を下げる」ことでインフレと対抗するとしているが、何とも大胆不敵な約束をしたものだ。失敗すれば政権の失速に繋がる一方で、この物価問題は、有権者にとっては最も大きな期待である。そこから逃げないというのは、政治家として極めて強気の姿勢と言えよう。

 その一方で、懸念された「アメリカ外交の180度転換」については、この就任日に起きていたことを総合すると、決してトランプ流一本では進めないという、一種のしたたかな現実主義が透けて見える。


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