これはルビオ氏が長年上院議員としての同僚であり、国家の軍事外交政策について高度な秘密にも触れつつ、国家意思の形成に尽力してきたという信頼感がベースにあるであろう。さらに踏み込んで言えば、例えばNATOの結束を壊すような無謀なことは、ルビオ氏は「しない」という「信頼」があってのことだと考えられる。
さらに言えば、8年前の第一次政権の際には、国務長官が石油会社出身のレックス・ティラーソン氏を任命し、後にティラーソン氏が「常識的な共和党穏健派」であることが「露見」した。その結果、大統領から更迭されたのだが、この時は、トランプ氏も自分の外交政策をどこまで「保守的なもの」にするかは決めていなかったようであるし、ティラーソン氏との乖離も徐々に起こっていったように見受けられた。
けれども、今回のルビオ氏の人事は、トランプ氏として以前はライバルであったルビオ氏の考え方は理解したうえで、また、その考え方が、今回は民主党議員全員からも支持されるような「常識的」なものと理解したうえでの指名であったと考えられる。ウクライナに関して、トランプ氏のような早期和平をルビオ氏が言い始めたのは24年の9月と比較的に遅かったし、NATOに対しては今でも重視しているのは間違いない。
そのルビオ氏が、歴史的とも言える「全会一致」で上院本会議から承認されたというのは、国際社会としては評価していいだろう。ちなみに、8年前のティラーソン氏の場合は「56対43」での承認であったから、かなり様子が違う。
「世界の現実」との接点を持った外交
ルビオ氏については、対中強硬派で知られるが、では対中国外交ということでは、トランプ氏、そして国務長官就任後のルビオ氏は強硬一本槍で進むのかというと、これも必ずしもそうとも言えない。というのは、トランプ氏は今回の就任式に習近平主席を招待していたからだ。
これに対して、中国は、さすがに国家主席本人の派遣はしなかった。だが、その代理として政府の序列2位で共産党内の序列8位の韓正国家副主席を派遣し、就任式に列席させた。
韓正氏は常務委員を退任しているが、国の代表としては完全にナンバー2である。従って、就任式の前夜にヴァンス副大統領(その時点では次期副大統領)が会談に応じて、これは米国内でも広く報じられた。またイーロン・マスク氏とも会談が持たれている。
まだ就任1日目であり、決めつけるには時期尚早であるのは間違いない。けれども、大統領自身の試行錯誤が続き、方向性も人事も迷走し続けた第1期政権と比較すると、2期目のトランプ政権の外交政策には、明らかに「世界の現実」との接点はある。またトランプ氏もヴァンス副大統領ともども、その現実を理解したうえで、支持者の期待を感じつつ、現実との折り合いをつける、そんな姿勢が透けて見える。
