エコノミスト誌1月25-31日号が、中国共産党の汚職防止運動は予想外の広がりを見せて続いているが前途は遼遠である、と報じています。
すなわち、習主席が始めた汚職防止運動は、今年に入ってさらに強化され、大きな影響が出ている。当局の発表によれば、去年は18万2千人の党・政府の役人が豪華な宴会や、冠婚葬祭・旅行・公共建築物等への不正支出の罪で処罰された。また、贅沢禁止や自粛のあおりで大都市では高級クラブやレストラン、高級ブランド企業の売り上げが大きく落ち込んでいる。
しかし、最近起きた2つの動きは、党が汚職防止に取り組むことの難しさをよく示している。
1月21日に、国際調査報道協会(ICIJ)などの海外メディアが、習や温家宝といった権力者の親族が密かに保有する海外資産を暴露したところ、翌22日、北京では、党幹部の資産公開などを求めた人権活動家たちの裁判が始まった。これは、党を取締まる権限は党だけにある、という習からのメッセージに他ならないが、ICIJの報告は、党には自浄能力がないことを示唆している。
海外資産が全て非合法というわけではないが、富と権力を持つ者の資産隠しには都合がよい。ICIJによれば、党中央政治局常務委員会の少なくとも現旧5名の委員の近親者、汚職調査に関わる国営企業の幹部、中国有数の富豪企業家が、ヴァージン・アイランドなどの現地法人に関与している。ICIJは海外資産を持つ中国・香港・台湾の37000名の氏名公表を予定しており、今後さらなる事実が明るみに出るかもしれない。
勿論、中国指導部にとって最大の懸念は、自分たちの親族に関する事実の発覚である。漏洩された情報によれば、習の義兄はヴァージン・アイランドの現地法人の50%を保有、また、以前、温家宝一族の巨額の資産について報じたNYT紙は、JPモルガン・チェースと温の娘との取引が米国で証券取引規制当局の調査対象になっていることを明らかにしている。
中国当局は今年になってようやく海外資産の開示を求めるようになり、さらに、新華社によれば、妻が海外に移住した役人の昇進は認めない方針がとられることになった。この海外移住願望は役人に限った話ではなく、ある調査によれば、富裕層の64%が望んでいるとのことである。