WPSアジェンダは、女性や少女が直面する課題を理解し、対処する枠組みを提供する4本の柱からなる。①参加、②保護、③予防、④救済と復興だ。発足以来、国連に加盟する110カ国・地域が少なくとも1回、WPS国家行動計画(NAP)を策定、採択している。この任意のコミットメントによって各国は防災・減災のような自ら特定した課題にWPSの枠組みを組み込むことができ、女性や少女の安全を確保しながら、彼女たちの〝声〟を増幅させている。
各国はWPSのイニシアチブを外交手段としても活用している。岸田文雄前首相による24年4月の米ワシントン訪問後、日米両国は初めてWPSに関して協力する考えを公式に表明した。その後に行われた日本、米国、フィリピンの3カ国対話でも、WPSが再び協力分野として強調された。様々な問題で各国の強みを生かすことによって、我々は国内外でより公正な社会を構築するために相互支援をすることができるだろう。
日本は15年以降に策定したすべてのWPS国家行動計画にDRRを盛り込むことによって、WPSアジェンダの拡大に貢献してきた。日本政府は女性や少女、男性や少年を含む全ての市民が災害時に十分な支援を受けられるよう、様々な政策や取り組みを導入している。しかし現実的には、国家レベルの善意の政策とイニシアチブが地方レベルに浸透するまでには数年、下手をすれば数十年の歳月がかかることが往々にしてある。これはもちろん、日本に限ったことではない。
日本は災害の観点で
リーダーシップを
日本の行く先には、災害に直面する市民社会に公正なレジリエンスを構築させるという重要な仕事が待ち受けているが、日本は既に自国の課題を認識し、積極的に改善に取り組んでいるといえる。このコミットメントについては、日本の功績が認められるべきだ。
冒頭述べたように、自然災害と無縁でいられる国はない。地球温暖化が進み、異常気象が増える中、歴史的に地震が少なかった地域でさえ、今では影響を受けるようになった。災害準備・対応における日本の豊富な経験がDRRとWPSの枠組みの統合と相まって、日本はグローバルリーダーとしての地位を確立できる潜在的な可能性を持っている。
こうしたシナジー(相乗効果)を活用することで、日本は世界に向けて、災害から力強く回復する力を持った平和で安全で公正なコミュニティーを促進し、災害から回復するための強靭な体制を整えることができる。これらの教訓は、紛争後の復興を含む、各国が直面する多様な困難にも適用可能だ。日本の防災減災アプローチの根幹をなす包括的な地域社会への参加やリスクに基づく計画の原則は、ウクライナのような紛争の影響を受けた国々の独自のニーズへの対応にも応用できる。
こうした災害対応を軸とした包摂性のあるメッセージは、現在は外交・安全保障分野における緊張関係にある国を含めて世界中の国々を結束させ、全ての人にとってより強靭で調和のとれた未来を築くための協調を育む可能性を秘めている。
