2025年12月6日(土)

災害大国を生きる

2025年1月31日

 多くの米国人は災害後に辛抱強く列をなして物資を待つ被災地の日本人の姿を想起する。滞在期間中、代表団のある女性メンバーは、完全に混乱した状態にあっても、日本人がこうした秩序だった「忍耐」と互いへの「敬意」を持つことができるのは日本文化のどのような側面が影響しているのかを考えていた。

 彼女が地元コミュニティーとの交流によって導き出した重要な教訓の一つは、日本の被災者の間には、災害復興と長期的レジリエンスの構築に欠かせない「共有された責任感」といえる社会意識が存在するということだった。対照的に、米国では個人の責任に重点が置かれている。結果として、シングルマザーや高齢者といった社会的弱者のための集団的なレジリエンスを損なう要因となっている。

能登視察の様子。石川県鳳珠郡能登町にある宮地交流宿泊所「こぶし」では多田喜一郎さんに当時の話を聞いた。

 能登と東北で私たちはあらゆる職業や地位の女性と出会い、会話をした。農場のオーナーや障害のある娘を育てるシングルマザー、ホテル経営者、災害時における社会インフラ問題に取り組む研究者、地元の避難所を運営する地域の世話役、地元の復興事務所の職員、高齢の住民などだ。災害から復興し、課題に取り組もうとする彼女たちの決意は明らかだった。過去のトラウマや継続的な課題を抱えているにもかかわらず、彼女たちは粘り強く、機知に富んでいると感じた。

 あらゆる調査研究で、既存の男女不平等や社会的脆弱性があるために、災害が女性や少女に不均衡に大きな影響を及ぼし、そのリスクを増幅させるということが明らかになっている。災害に見舞われた時、女性や少女の方が男性よりも死亡率が高く、暴力に遭う確率も高い。さらに、社会経済的な苦境が深刻で、性と生殖に関する健康問題にも見舞われやすい。これらの理由から、災害後は女性や少女が抱える特有の苦難に対処するメンタルヘルス支援を提供することが極めて重要になる。

 日本にも、自治体の心のケアセンターや災害派遣精神医療チームなど、被災者を支援する仕組みは既に設けられている。しかし、日本人は「我慢」や「忍耐」を美徳とする文化的傾向があり、メンタルヘルスケアサービスの利用率が欧米諸国より大幅に低いことが分かっている。日本の被災者のメンタルヘルスニーズに対処する文化的に適切な方法を見つけることが急務だ。

WPSは〝全ての人〟の
平和と安全につながる

 女性・平和・安全保障(WPS)アジェンダは2000年に国連安全保障理事会決議1325号によって確立され、WPSの全ての取り組みが今も基盤としている2つの重要な要素を強調した。

 一つは、女性は危機と紛争によって特有かつ不均衡に大きな影響を受けること、もう一つは、女性は平和構築において重大な役割を担うということだ。これらの原則は、女性を特有の被害から守り、女性による意思決定への意義ある参加を確保することが、全ての人にとってのより大きな平和と安全につながることを示している。発足当初は武力紛争に重点が置かれていたが、WPSアジェンダに組み込まれる分野は過去24年間で拡大し、防災・減災や気候変動、技術、政治参加といった問題を包括するようになった。


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