2025年4月22日(火)

WEDGE REPORT

2025年2月21日

ウクライナで培われた寒さ対策と限界

 ウクライナでは、セントラルヒーティングが一般的だ。これは寒冷地でよく行われる暖房方式で、都市全体に温水を供給して建物を暖める仕組みである。24時間稼働しているので、建物全体が温まり、屋内は常に暖かく快適だ。

 首都キーウでは冬季はマイナス10度を下回ることもある。暖房の有無は生死にかかわる。このため、電力会社は、基本的に暖房を優先しているため、停電してもこの温水供給が止まることは基本的にないという。

 「全面侵攻から停電は度々起きているが、暖房は止まった覚えはない。ただ、電力不足のために暖房が付く期間は、短くなっていると思う。また電気代の高騰が辛い」と筆者の住む家の大家はこぼす。

 全面侵攻が始まった初期、停電は6時間など一度に長時間行われることが多かったという。今は3時間ごとに2回など分散して行われるようになった。

 セントラルヒーティングは建物全体を温めるので、3時間の停電によってすぐに冷えるわけではない。また夏場の冷蔵庫も同様ですぐに庫内が温まるわけではない。時間を分けた計画停電により停電の影響は軽減されたようだ。

 しかし、そうした状況も住んでいる建物によって異なるようだ。

 ウクライナでは昔から12階建て以上の建物でガスを引くことが法律で禁止されている。調理も電熱コイルやIHヒーターだ。このため、停電中は料理だけでなく、お湯を沸かしてお茶を飲むことすらできない。

 また、高層建物の場合、暖房も水も止まることがよくあるという。建物によっては暖房の温水を上階へくみ上げる設備の電力が止まるためだ。水も断水してしまう。もちろんエレベーターも止まってしまう。

カフェ内に置かれているジェネレーター(右下。停電の際は外に出して発電する(筆者撮影、以下同)

 一軒家や商店では発電機を使っているところが多い。カフェの中に小型ジェネレーターが置いてあるという日本ではあまりない光景も見受けられる。電気があるときは屋内にしまっておくことになっているという。一軒家に住む住民は個人で所有することもある。マンションの場合は屋内に発電機を置くことは禁止されているため、使用できない。停電が始まると、いたるところで発電機が稼働し始める。

停電に備えた発電のための小型ジェネレーター。ウクライナには、いたるところに置いてある

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