発電機はうるさいし、排気臭もするのであまり気分の良いものではない。また、家庭で使っているサイズのものだと「冷蔵庫や明かりを使う程度のパワーしかないものが多く、電子レンジや湯沸かし器は使えない」といった声も多い。もちろん稼働させるためには燃料が必要になり、金銭的負担も大きい。
失われる〝当たり前の日常〟
冬季、キーウは夕方4時になると既に暗い。停電になると家の明かりも街灯が消えてしまう。真っ暗な中歩くのは危険である。
筆者も何度か怖い思いをした。車通りの多い道で歩道が狭かったり、住宅街で横断歩道がないところで道を渡ったりするときには冷や冷やする。現在は友人に勧められて反射板を身に着けて歩いている。
戦争開始後、停電すると信号も動かなくなったという。現在は信号にバッテリーを設置したり、電気系統を分離したりして信号は停電の影響は受けなくなった。
「授業中に停電すると、やる気がなくなる」。中学生の女の子はこぼす。ウクライナの冬は日が短いうえに曇りがちだ。停電しても黒板が見えないわけではないが、とにかく薄暗い。授業はタブレットを使うこともあるので、充電が気になってしまうようだ。
インターネットも停電の影響を受けることがある。モバイルインターネットの基地局(アンテナ)にはバッテリーがついているが、こちらも停電が長引くとバッテリーが持たずに止まってしまう。
筆者がスーパーで買い物中に停電が始まり、発電機が稼働するまで一瞬ほぼ真っ暗、ということもあった。暗さにも驚いたが、お店中の客が一斉にため息をついたことが印象的であった。いかに皆がうんざりしているのかが伝わってきたような気がした。
個々人でできる対策は、とにかく充電できるものは常に充電する、またモバイルバッテリーを持ち歩く、容量の多いバッテリーを複数用意するといったことだろう。日本ではキャンプなどで使用するような大型充電器を用意している人もいる。
いつまでこうした断続的な停電が続くのか分からない。ロシアの攻撃でもっとひどい停電になるかもしれない。この先行きの不明さが余計にストレスや苛立ちを増大させているのは確実だ。