防空システムの必要性
全面侵攻以降、ウクライナはインフラ施設が被害を受けた場合の対応能力を向上させてきた。予備電源を確保したり、修復作業を素早く進められるような設備を導入したりしている。
しかしながら、市民らは「防空システムが配備されたことにより、生活が守られている」と最も有効な対策を話す。
筆者は小さな軍事工場の近くに住んでいる。ロシアによる攻撃目標となる場所だ。このためか、近所には防空システムが複数配備されており、毎日のように迎撃ミサイルの発射音がする。
迎撃音はミサイルを発射する音だ。率直にはこのような音を聞くのは怖い。
キーウへの攻撃は中型ドローンによるものが主流である。ドローンは夜間に暗闇に紛れて飛来することが多い。そのため、寝る準備や横になった頃にミサイルの発射音が近所からする。
寝る前に「戦争の音」を聞かされるのは非常に気分が悪い。しかし、同時にこのミサイルが我々を守ってくれている。安心を与えてくれる存在でもあるのだ。
防空システムは迎撃するだけではない。電波妨害によって、敵型のドローンの位置情報を混乱させ目標に到達させない。さらにはロシア側に飛行させる、ということもできる。これは音もないし、爆破させるわけではないので破片による被害も少ない。市民の心理的負担も低いだろう。
しかし、この場合は電波障害が発生する。例えば市民のスマホのGPS情報がおかしくなってしまう。
戦争の恐怖や不便が付きまとうのだが、防空システムがなければ、停電はもっと悲惨な状態になっていたことは疑いようがない。地方都市にはこれほどの防空システムは配備されておらず、飛んできたドローンやミサイルは迎撃されることなくそのまま着弾するのである。
防空システムに守られたキーウから出ると、飛んできたドローンやミサイルがそのまま落ちてくる恐怖を強く感じる。そしてキーウに戻ってくると、近所からする耳障りな迎撃音にイライラしつつ、安堵する。攻撃されてもそれを防いでくれる存在がいるのだ。
