「からゆきさん」と「特殊慰安施設協会(RAA)」
『べらぼう』は陰りの見え始めた吉原に客を呼び戻すために蔦屋重三郎がさっそうと立ち上がるという、『プロジェクトX』のようなある意味で威勢のいいストーリーらしい。しかし、この町の真実を知れば、ここに似合うBGMは、中島みゆきの『地上の星』ではなく、加古隆の『パリは燃えているか』のほうだと、筆者には思えるのである。
明治以降も、「からゆきさん」と呼ばれた女性たちがいた。九州の貧農の少女たちが海外(中国、東南アジア、シンガポール、アメリカなど)を渡った。
例えば、『日本占領を問い直す―ジェンダーと地域からの視点―』(平井和子著)などにも詳しいが、終戦後は、連合国軍総司令部(GHQ)の兵士向けに「特殊慰安施設協会(RAA)」が設立された。集められたのは戦争未亡人や困窮した女性たちであり、設立に関わったのはほかならぬ日本政府であり、日韓問題と思われがちな従軍慰安婦にしても、その多くは日本人であったという。
これらは、歴史の授業では教えない。教科書にも書いていない。悲惨すぎて、学校教育では扱えない。
もちろん、様々な事情があることは理解している。また、本論で述べたようなことに対して、「そんなことを敢えて言う必要はないのではないか」と、違和感を覚える人もいるかもしれない。
しかし、筆者としては、大河ドラマで描くのであれば、このような現代史の暗部については、NHKの『映像の世紀』で、開示できる範囲で、しっかりと取り扱ってほしいと切に思うのである。それが公共放送NHKの一つの役割であり、使命なのではないだろうか。
