「ウクライナの安全に米軍は参加しない」
第二に、欧州の安全保障における米国の役割である。本来、今回のミュンヘン安全保障会議はウクライナ戦争への対処、またこれを含む欧州の安全保障のあり方について議論を深めることを主要議題としていた。ところがこれに先立つNATO国防相会合で米国のヘグセス国防長官は、①14年以前の領土を取り戻すことは非現実的、②ウクライナのNATO加盟は非現実的、③ウクライナの安全の保証のために米軍は参加しない等の考え方を明らかにした。
さらに同安全保障会議では米国のバンス副大統領がスピーチを行い、ロシアや中国などの脅威よりも「欧州内部から来る脅威」を懸念しているとして、ウクライナ問題やロシア、中国に対する抑止戦略について全く触れなかった。これを受けて2月17日、欧州の有志国はパリで、米国の欧州安全保障に対するアプローチの問題やウクライナ情勢への対応等を話し合う緊急サミットを開催した。
プーチンの狙い
第三に、大国による世界秩序形成の問題がある。プーチンは近く行われるであろう米露首脳会談を、第二次世界大戦後における世界秩序形成の基礎となった米英ソ三カ国の首脳会談になぞらえて見ているはずで、これこそ正にプーチンが長らく望んでいたことである。
プーチンの狙いについては本件記事で詳しく取り上げられている。今回のロシアによるウクライナ侵攻並びにそれによって引き起こされた膨大な損失、そして何よりも、誰もこれをとめることができないという厳然たる事実は、「大国による秩序形成」が如何に多くの問題を含むものであるかを示している。

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