2024年4月20日(土)

Wedge REPORT

2014年3月14日

何故このタイミングだったのか

 プーチン大統領がどの時点でロシア軍の介入を決断したかははっきりしないが、昨年11月にキエフのマイデン広場で反政府デモが発生した段階では緊迫感は薄く、さすがにこの段階で軍事的オプションは考慮されていなかったはずである。

 しかし、反政府デモの中に暴力的な極右勢力が浸透して死傷者が出るようになって以降、今回のような事態を考慮に入れてある程度の準備を進め、ヤヌコヴィチ大統領が首都を捨てた段階で介入が決定路線となったのではないだろうか。少なくとも、本稿冒頭で紹介したロシア軍の鮮やか手際を見る限り、事前に何らかの準備が行われていたことは間違いないと思われる。

 また、このようなオプションを検討する際、プーチン大統領は米欧が軍事的な対抗手段をとってこないことまで織り込んでいたことは間違いない。巨額の軍事費削減を迫られているオバマ大統領が、シリアへのごく限定的な軍事介入にさえ消極的であることを見抜いて攻撃を回避させたのはそもそもロシアである。実際、ロシア軍によるクリミア介入がほぼ明らかになってからも米欧は小規模な軍事力の増強を行った以外、経済制裁を全面に打ち出して軍事的対決を回避しようとしているし、その制裁でさえ米欧間で足並みは乱れている。

 今後、米欧は何らかの経済制裁や外交的制裁をロシアに科すことは間違いないが、それが実効的なものとなる可能性は低いように思われる。少なくともクリミアの分離独立、あるいはロシア併合を阻止することは現状では困難と判断せざるを得まい。


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