2025年12月5日(金)

Wedge OPINION

2025年3月11日

 生徒保護者は創造的な教育実践よりも、進路実績や施設環境等を重視する傾向が強い。必然的に私立学校では大学受験に特化したカリキュラムを組んだり、スポーツ強化策を施したりして生徒募集を強化することになる。

 具体的には、国の標準時数を大幅に上回るカリキュラムを週6日間に組み込んだり、中高一貫教育の学習内容を5年間で終わらせ、6年目には生徒個々の受験校に特化した対策に力を入れたりしている学校が多い。施設環境も充実している。

 また、コロナ禍では、公立に比べていち早くオンライン授業に対応した学校も多い。公立と違って習熟度別のクラスやコースを多様に設けて個に応じた教育(言い換えれば効率的な教育)の充実も特徴である。

 こうしたことを見れば、私立の魅力は分かりやすい。まだまだ学歴社会が残る日本においては多少お金がかかってでも私立志向が高まることは当然であろう。

 現在は中高一貫教育が主流である。中学校は義務教育だから私立でも無償化の対象にはならないにもかかわらず首都圏の私立中学受験熱はすさまじい。主立った私立中学の受験日には小学6年生のクラスは欠席が多くて授業も自習になると聞く。

 このような私立学校の在り方について、「学校」の目的や公共性から見た場合、適切と言えるかどうかは評価の分かれるところであろう。また、独自の特色ある教育を打ち出せるのが私立の強みのはずが、結局はどこも大学受験特化型やスポーツ強化など同じような路線になってしまっている。だが、税金で賄う公立と違って他校と激しい競争を勝ち抜き自立自走しなければならない私立学校の立場で言えば、生徒募集は死活問題であるから生徒保護者のニーズがそれを求めている以上やむを得ないと言えるだろう。

公立の強みとは

 これに対し、定員割れすると言われる公立学校は私立に比べてそんなに魅力が無いのだろうか。

 確かに公立は様々な法規制によって画一的なカリキュラムや学校運営を強いられるし、いかに効率的とはいえあからさまに生徒をふるいにかけるような学級編成などはできない。また税金で運営する以上、施設の改修だって簡単ではない。

 しかし、教育とは最終的には人と人との営みである。教師の力量や在り方が非常に重要であることは間違いない。教員の資質向上は至上命題である。世間には全く知られていないが、その点では公立学校における教員の研修は手厚く、そのお金のかけ方は私立の比ではない。

 まず、教育公務員特例法により教員は研修と修養に務めることが義務づけられている。例えば新規採用教員1人ひとりに指導教員が丸1年間に渡って配置され、授業に張り付いて指導にあたっている。

 文部科学省の指針によれば年間300時間以上の校内研修、教育センターなどにおける年間25日間以上の校外研修を行うことになっている。その費用は莫大であり、公立だからこそできることと言える。


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