
アメリカでジャーナリストが、政府高官らによる通信アプリのチャットグループに招待され、イエメンでの空爆計画を知ったと報じた問題で、ドナルド・トランプ大統領と高官らは25日、機密漏えいの影響は大きくないとして火消しに努めた。
この問題はこの日の上院公聴会で取り上げられた。タルシ・ギャバード国家情報長官とジョン・ラトクリフ中央情報局(CIA)長官は、チャットグループで機密情報が共有されたことは一切なかったと述べた。
一方、今回の情報漏えいの中心人物とされるマイク・ウォルツ大統領補佐官(国家安全保障問題担当)はこの日、トランプ氏とホワイトハウスで面会した。トランプ氏はウォルツ氏への支持を表明し、この問題が軍事作戦に影響を与えることはないと主張した。
この問題は、米誌アトランティック編集長のジェフリー・ゴールドバーグ氏の記事で明るみに出た。それによると、同氏は今月11日に、政府高官ら18人で構成する民間通信アプリ「シグナル」のチャットグループに、おそらく手違いによって加えられた。そこでは、イエメンの空爆についてやりとりされていた。
このチャットグループには、ラトクリフ氏やギャバード氏、ウォルツ氏のほか、J・D・ヴァンス副大統領やスージー・ワイルズ大統領首席補佐官、ピート・ヘグセス国防長官なども含まれていたという。
アメリカによるイエメン空爆は15日に実施され、53人前後が死亡した。米当局は、海上貿易やイスラエルの脅威となっている、イラン系の反政府勢力フーシ派を狙ったと説明した。
アメリカはその後も空爆を続けており、25日早朝にも実施した。
上院議員ら説明求める
25日の上院情報委員会の公聴会は、麻薬カルテルと人身売買がテーマになる予定だったが、今回の情報漏えい問題の質疑が続いた。
ラトクリフCIA長官は、ゴールドバーグ氏が報じたような、軍事作戦における武器や標的、タイミングに関する具体的な協議は、チャットでなされたとは認識していないと発言。
今回の情報漏えいを、ものすごいミスだと思うかと問われると、「いいえ」と答えた。
ギャバード国家情報長官は、「機密情報は一切」漏れていないと繰り返し主張。情報の「不注意な公開」と「悪意ある漏えい」は別だとした。
野党・民主党の委員らは、問題のチャットに関わった人々を、いい加減で無能だと批判。「プロのすることではまったくない。謝罪もない」、「このミスの重大さを認めてもいない」などと責めた。
こうしたなか、上院の軍事委員会と外交委員会のそれぞれの委員長(ともに共和党)は、今回の情報漏えい問題に関して調査が必要だとする考えを表明した。
トランプ氏はチームを擁護
一方、トランプ氏は25日朝、米NBCニュースに電話で出演し、チャットグループにゴールドバーグ氏を招待したとされるウォルツ大統領補佐官を擁護した。
トランプ氏は、「マイケル・ウォルツは学んだ。彼はいい人だ」と発言。ゴールドバーグ氏がグループに加わったのは「不具合」によるもので、作戦には「まったく影響ない」と述べた。
また、ゴールドバーグ氏をチャットに招待したのはウォルツ氏の側近だったと主張。「職員が彼(ゴールドバーグ氏)の電話番号を保存していた」とした。
トランプ氏はその後、ウォルツ氏と同席したホワイトハウスのイベントで、「私の理解では、機密情報はなかった」と述べた。そして、政府やメディアの多くの人々が使っているアプリが使われていたと説明した。
一方、ウォルツ氏はゴールドバーグ氏について、一度も接触したことはないと主張。トランプ政権の成功よりも「多くのデマ」を報じたがる記者だと非難した。
こうしたなか、超党派の監視団体「アメリカン・オーバーサイト」は25日、チャットに参加した個々の当局者を、連邦記録法と行政手続法に違反したとして訴えた。チャットのメッセージが自動削除されるよう設定することで、ホワイトハウス職員に国立公文書館への記録提出を義務付ける法律に違反したとしている。
BBCが提携する米CBSが入手した文書によると、国家安全保障局は先月、職員らに対し、「シグナル」のセキュリティー面での脆弱(ぜいじゃく)性を警告したばかりだった。
「シグナル」は25日、「脆弱性」について反論する新たな声明を発表した。
かつて中東担当の国防次官補(DASD)を務めた、元CIA職員のミック・マルロイ氏は、「不確かな民間アプリ」で機密性の高い議論をするのは「容認されない」ことだとBBCにコメント。
「そして、そのチャットの参加者全員がそれを知っていた」、「この情報はまさに敵が知りたがっているものだということは、軍や情報機関のメンバーでなくてもわかる」と付け加えた。
(英語記事 Trump and intelligence chiefs play down Signal group chat leak)