
米誌アトランティックの編集長が、米政府高官らによる通信アプリのチャットグループに招待され、イエメンでの空爆計画を事前に知ったと報じた問題で、同誌は26日、高官らのチャットのやりとり全体を公開した。
アトランティックのジェフリー・ゴールドバーグ編集長は最初の記事で、チャットの内容の一部のみ明らかにしていた。国家安全保障会議(NSC)は、やりとりは実際のものとみられると認めている。
ただ高官らはその後、機密情報はチャットで共有されていなかったと主張。それを受け同編集長は、「みんなが自分で判断するために、テキストを見るべきだと考えるようになった」として、全体の公開を決めた。
以下、公開されたやりとりを分析する。
空爆のスケジュール
チャットには、今月15日に米軍が実施したイエメン空爆の、詳しい計画が出てくる。作戦で使う航空機、兵器システム、情報収集装置など、軍関係者が「パッケージ」と呼ぶものだ。
国家安全保障局(NSA)元顧問のグレン・ガーステル氏は、「当時、これが機密情報でなかったというのは考えられない」とBBCに話した。
ピート・ヘグセス国防長官からのメッセージには、午後12時15分(米東部時間)にF-18戦闘機が発進し、同1時45分から最初の空爆が起こりうると書かれている。
さらに、午後2時10分にさらにF-18が発進し、午後3時36分に2回目の空爆を開始するなどと記されている。
英陸軍の元情報将校のフィリップ・イングラム氏は、この種の情報は「極秘に分類されたであろうものに明確に該当する」とBBCの取材で指摘。「戦闘機がどこからやってくるのか、事実上判断できる」とした。
ホワイトハウスや当局の関係者らは、この情報は「戦争計画」には当たらないと主張している。
ヘグセス氏はXへの投稿で、アトランティックが掲載した「『戦争計画』とされるもの」には、名前や目標、場所、部隊、ルート、情報源、方法がまったく出てこないと述べている。
ガールフレンドの家で攻撃された「ミサイル男」
チャットではマイク・ウォルツ大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が、空爆の最新情報を提供している。
ウォルツ氏は、標的とした建物が崩壊したと報告。その建物は、アメリカが追ってきたイエメンの反政府武装組織フーシ派の「ミサイル男」のガールフレンドの住居で、事前に「ミサイル男」が歩いて入っていくのを確認していたとした。
ウォルツ氏のメッセージは、標的の人物の居場所や動きをどう追跡したのかは明らかにしていない。
アメリカによるイエメン空爆では少なくとも53人が死亡した。フーシ派の訓練施設、ドローン(無人機)のインフラ、武器の製造・保管場所、指揮統制センターなど30カ所以上を攻撃した。
ウォルツ氏がチャットで説明したのがどの標的だったのかは不明。
イエメンでのCIAの活動
米軍の特殊作戦に関わった元兵士で、ドナルド・トランプ大統領が国家テロ対策センターの所長に指名したジョー・ケント氏からのメッセージも、慎重に取り扱うべきものだった可能性がある。
ケント氏は、イスラエルが独自に空爆を実施していることに言及。イスラエル政府はさらなる攻撃で使う武器の在庫を「補充」しようとするだろうが、それは「ささいな要因」だとしている。
これを受け、ジョン・ラトクリフ中央情報局(CIA)長官は、攻撃を支援するためにアメリカが「資産を動員」しているものの、それが遅れたとしてもイエメンでのCIAの活動に「悪影響はない」と、さらに取り扱いが慎重な内容を発信をしている。
ここでの「資産」とは、イエメンにいるCIAのスパイや、監視用ドローンの飛行などの技術を指している可能性がある。
元国防副次官補でCIA準軍事将校だったミック・マルロイ氏は、ラトクリフ長官のメッセージは非常に極秘なものだと、取材に対して指摘。「基本的に、CIAがどこに重点を置いているかの情報は共有したくない」と述べた。
ラトクリフ長官は26日の下院公聴会で、機密情報を送信してはいないと述べていた。
(英語記事 Three sensitive messages from Yemen strike Signal chat unpacked and explained)