2025年4月2日(水)

BBC News

2025年3月29日

ロシアのプーチン大統領

ロバート・グリーンオール記者、ジェイムズ・ランデイル外交担当編集委員

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は28日、ウクライナを一時的に国連の統治下に置き、より「有能な」政府を選挙で選ぶという、ウクライナの暫定統治案を示した。ウクライナ現政府の正当性に異議を唱えるプーチン氏の、新しい試みといえる。

ウクライナは、ドナルド・トランプ米大統領が提唱する和平協定の実現に向けた動きをさらに遅らせるために、プーチン氏が「クレイジーな」考えを提案していると非難した。

米ホワイトハウスは、ウクライナの統治はウクライナ憲法とその国民によって決定されると主張した。

アメリカが、ウクライナとロシアの全面戦争の停戦を仲介しようとする中で、プーチン氏は今回の提案をした。

ウクライナとロシアの停戦をめぐっては、ホワイトハウスが26日、双方が黒海での限定的な停戦に合意したと発表した。

しかし、ロシアはその後、黒海での停戦合意の発効に必要だとする、西側諸国の対ロシア制裁の解除を含む複数の条件を提示。ロシア政府が停戦に向けた動きを妨げようとしているとの懸念を招いた。

ロシア、ウクライナ現政府は非合法と

プーチン氏はこの日、北極圏にあるムルマンスクで、原子力潜水艦の乗組員を前に語った。その中で、国連の援助の下でのウクライナ暫定統治は、「アメリカ、欧州諸国、そしてもちろん、我々のパートナーや友人たちとも」話し合うことができると述べた。

「これは、民主的な選挙を実施し、国民から信頼される有能な政府を樹立させ、その政府とともに和平合意に向けた協議を開始し、合法的な文書に署名するためのものだ」と、プーチン氏は付け加えた。

ウォロディミル・ゼレンスキー氏は、2019年に民主的にウクライナ大統領に選出され、2024年5月に任期を終えるはずだった。しかしウクライナでは、ロシアの全面侵攻を受けて戒厳令が出されたことで、選挙が実施されていない

ロシア政府は、ゼレンスキー氏が任期満了後も政権を維持しているため、ウクライナの現当局は非合法で、正当な交渉相手ではないと主張している。

500万人以上のウクライナ国民が国外に避難し、多数の国民が故郷を離れて前線で戦っている状況で、正当な選挙を実施するのはほとんど不可能だ。

プーチン氏は選挙の実施を呼びかけることで、ゼレンスキー氏が和平交渉における正当な交渉相手なのかと疑う姿勢を示している。ホワイトハウスはすでに、こうした主張に同調している。

プーチン氏は選挙を強行できれば、戦場で成果を上げる中、ウクライナを分断させ、ウクライナの注意をそらせることを期待しているのかもしれない。

クレムリン(ロシア大統領府)のドミトリー・ペスコフ報道官はその後、ウクライナ政府が「統治能力を喪失」していることを示す兆候があり、プーチン氏の発言はそれに対応したものだと説明した。

また、ウクライナ軍が指導部の命令に従っていないと指摘。アメリカとの協議でエネルギー・インフラへの攻撃を一時停止することに合意したにも関わらず、ウクライナ軍はロシアのエネルギー施設を攻撃し続けているとした。

ウクライナ側は、ロシアのエネルギー施設への攻撃をめぐるロシア側の報告はうそだとしている。また、ロシアがウクライナのインフラを攻撃し続けていると非難している。

「ロシアは戦争継続を選択」とウクライナ

プーチン氏は、ウクライナの移行政府に関する提案は、数ある選択肢の一つに過ぎないとしつつ、東ティモールや旧ユーゴスラビアの一部など、国連の暫定統治下に置かれた国際的な前例があると指摘した。

プーチン氏の発言を受け、ウクライナのアンドリー・イェルマーク大統領首席補佐官は、ロシアは和平に向けた動きを停滞させようとしており、戦争の継続を選んだと述べた。

こうした中、米国家安全保障局の報道官はロイター通信に対し、ウクライナの統治はウクライナの憲法とその国民によって決定されると述べた。

プーチン氏は、ロシアは戦争の前線全体で「戦略的イニシアチブ」を握っており、ウクライナ軍を「おしまいにできると信じるに足る理由がる」と述べた。

ただ、戦闘の進捗を頻繁に宣言しているにも関わらず、ロシアのウクライナ東部での領土掌握にはかなり時間がかかっており、限定的な進展しかみられていない。

プーチン氏の今回の提案に先立ち、フランス・パリでは27日、ゼレンスキー氏と欧州の指導者らが、ウクライナでの戦争をめぐり協議した。エマニュエル・マクロン仏大統領は、ウクライナでの「再保証部隊」に関する計画をフランスとイギリスが進めていると述べた。

(英語記事 Putin floats idea of UN-led government in Ukraine

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cge1e0040zlo


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