
アメリカでドナルド・トランプ大統領が新たな関税を発表した翌日の3日、株価が世界的に下落した。「相互関税」が物価上昇を招き、アメリカ内外の経済成長を圧迫すると予想されている。一方、トランプ氏はアメリカが「好景気になる」と主張した。
米株式市場では、アメリカの大手企業500社を対象とするS&P500種が4.8%急落。新型コロナウイルスの世界的な流行で経済が大打撃を受けた2020年以降で最大の下落幅となった。貿易戦争への懸念から、2月中旬以降続いている売りが継続し、約20億ドル値下がりした。
ダウ工業株平均は約4%安、ハイテク株比率が高いナスダックは約6%安で引けた。
英株式市場では、FTSE100種が1.5%下落。ヨーロッパの他の市場も下落した。
これよりも先、日本や香港などアジア市場でも株価は下がった。東京株式市場では、日経平均株価が989円94銭安の3万4735円93銭で取引を終えた。4日も続落し、一時、約8カ月ぶりに節目となる3万4000円を割り、2.64%落ち込んでで午前の取引を終えた。
アジアの他の市場やオーストラリアの市場でも、4日に下落傾向が続いている。
アジアで生産している企業が打撃
米株式市場では3日、スポーツウェアの多くをアジアで生産しているナイキが14%下落。S&Pの中で最も大打撃を受けた。
中国と台湾への依存度が高いアップルの株価も9%下がった。
他の小売企業も下落し、ターゲットは約10%下がった。
オートバイメーカーのハーレーダビッドソンは10%下落。同社はドナルド・トランプ大統領の1期目に、欧州連合(EU)の報復関税の対象とされた。
同日の欧州株式市場では、スポーツウェアのアディダスが10%超下落し、ライバルのプーマも9%以上の大幅安となった。
高級品メーカーでは、宝飾品のパンドラが10%以上下落。高級ファッション大手LVMH(ルイ・ヴィトン・モエ・ヘネシー)は、EUとスイスに相互関税が課されることが発表された後、3%以上下落した。
フリーダム・キャピタル・マーケッツのジェイ・ウッズ氏は、「関税が予想していなかった国々まで広がったため、小売企業が今まさに壊滅的な打撃を受けている」と分析。今後も混乱が予想されるとした。
株価が下落する一方、波乱時の安全資産とされる金の価格は3日、一時1オンス3167.57ドルの史上最高値を記録した。だがその後に下がった。
為替市場では、ドルが多くの通貨に対して弱含んだ。
トランプ氏は「うまくいっている」
こうしたなか、トランプ氏は3日、ホワイトハウスで記者団に対し、輸入品に一律で最低10%の基本関税を課し、約60カ国には「相互関税」として税率を上乗せする自らの決定について、正当性を主張した。
トランプ氏は、「とてもうまくいっていると思う」、「患者を手術するようなもので、大きなことだ。これはまさにそういうことだろう」と説明。「市場は沸く。株価は急上昇する。アメリカは好景気になる」と述べた。
トランプ氏はまた、貿易相手国から「驚異的なことを提示すると言われれば」、関税に関して交渉する可能性はあると述べた。
中国とEUは報復すると
今回の関税措置によって計54%の関税を課される中国と、20%の関税を課されるEUは3日、それぞれ報復を宣言した。
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、欧州企業に対し、アメリカへの投資計画を中止するよう求めた。
世界貿易機関(WTO)は、米政府の関税政策を「深く懸念している」と表明。今年の貿易量が1%減少する可能性があるとの見方を示した。
投資家らも、関税がインフレを刺激し、経済成長を停滞させる恐れがあると懸念している。
企業はいま、関税によるコスト増を引き受けるか、取引先と協力して負担を分かち合うか、あるいは消費者に転嫁して売上減のリスクを負うかの選択に直面している。
世界経済はアメリカの個人消費が約10~15%を占めるとの試算もあり、企業の決断が大きな影響を与える可能性がある。
(英語記事 Trump tariffs trigger steepest US stocks drop since 2020 as China, EU vow to hit back)