問題点(2)
原発の押し売りをする日本?
安倍首相のトップセールスはやり過ぎか?
先ず第一のポイントは、福島事故後も世界では、ドイツ、スイスなどごく一部の国を除き、原発拡大傾向が続いていることだ。とくにアジアや中東などの新興国の間にその傾向が顕著で、ベトナム、UAE、トルコのように初めて原発建設に乗り出した国もある。これらの国々では、先進国と同様、エネルギー需要の飛躍的増大と地球温暖化対策として原発の有用性が認められ、国家的プロジェクトの形で強力に進められつつある。それに伴い、フランス、ロシア、米国、韓国、中国等原発輸出能力を持った諸国が世界各地で激しい受注合戦を繰り広げている。各国とも大統領や首相、外相が直接売り込みの先頭に立っている。
その中で、半世紀にわたって営々と培ってきた日本の原子力技術(耐震性など)への世界の評価は高く、福島事故にもかかわらず、むしろこの事故で一層鍛えられた日本の原発技術への信頼は揺らいでいない。そうした日本の協力を是非とも得たいという国は多い。そうした国の中で、特にベトナムは、民主党政権(菅内閣)時代の2010年末に日本から原発2基を輸入することに決定し、その1年後に日越原子力協定を締結した。ヨルダンとも協定が締結済みだ。
自民党政権になって、安倍総理自らアジアや中東、東欧などでトップセールスに動きまわっているが、それは相手側にニーズと期待があるからであって、決して押し売りをしているわけでもなく、国際的に見て総理の動きが突出しているわけでもない。
勿論原発輸出が、アベノミクスの成長戦略の中で重要な役割を担っていること、さらに、今後国内で原発新設が期待できないメーカー企業が海外進出に活路を見出そうと必死になっていることも明らかである。
問題点(3)
日本が輸出に応じなくても新興国は原発をやめない
日本は蚊帳の外でいいのか?
これらの新興国は、もし日本が応じなければ原発建設を諦めるのではなく、当然のように別の国から輸入して、予定通り原発建設を進めるだろう。そして、そうなった場合、日本は「蚊帳の外」におかれることになる。一般に、原発輸出国は企業秘密保護のため他国の技術者の現場への立ち入りを制限する場合が多いからだ。そうなると、せっかく日本が優れた原発技術を持ち専門家を多数抱えていても、そこの国に対し自由に技術指導も出来なくなる。