2024年7月16日(火)

Wedge REPORT

2014年4月2日

 原発輸出に反対する人々は、日本の原発輸出は核拡散を助長すると言うが、決してそうではなく、事実は真逆である。日本は福島事故の苦い教訓を生かし安全性を一層向上させた原発を輸出することにより、世界の原発の安全性向上に貢献できるだけでなく、核不拡散の思想を広め、新興国に範を示すことにより世界平和にも貢献できる立場にある。というより、そうする国際的な責務が被爆国・日本にはあることを忘れるべきではない。これこそ「積極的平和・安全主義」への道である。自ら関与しなければよしとする消極的、退嬰的な「一国平和・安全主義」の殻に閉じこもるべきではない。そして、これが原発輸出を含む日本の「原子力外交」の本旨であることを肝に銘じたい。

問題点(5)
インドとの原子力協力は
NPT体制の崩壊につながる? 
日印原子力関係の重要性への正しい理解

 ついでに、この機会に、日印原子力協力問題についても一言しておきたい。(なお、この件についてはWEDGE 2010年8月号の拙稿「日印原子力協定反対論にもの申す」で詳しく論じてあるので、是非再読していただきたい。)

 インドは、NPT非加盟――日本のマスコミが「未加盟」というのは不適当――であるという理由で、インドとの原子力協力はNPT体制を弱体化させるから不可だという意見があるが、それは、国際政治の実態を知らない人の観念論、形式論であり、非現実的な議論である。

 インドは、最大のライバルである中国に「核兵器国」という特権的地位を与え、いくら核兵器を増産してもお咎めなし――実際に中国は5大国の中で唯一着々と核軍拡の道を突進しているーーという現在のNPT体制は本質的 不平等、不公平であるとして、一貫してNPTへの加盟を拒否している。しかも、インドは、日米同盟に基づく米国の核抑止力、つまり「核の傘」に依存する日本と異なり、どこの国の「核の傘」にも入っていないから、自力で自らを守る以外にない。

 インドの核政策は、当然ながら、インドの「至高の国家的利益」(NPT第10条)に基づくものであって、主権的な問題である。日本が「唯一の被爆国」という特殊な立場を振りかざして、説得できる国ではない。まして、核実験を行ってはいかんとか、もし行ったら協定関係を直ちに停止することを協定中に明記せよとの要求を呑むような相手ではない。それを言うならば、まず中国に対して言うのが筋ではないかと反論されるだけだ。


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