2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2014年4月2日

 そして、もし、そのような新興国で将来大事故が起こっても日本から救援に駆けつけることは難しい。その結果累が日本に及ぶことも十分ありうる。東アジア諸国の場合は特にその可能性が否定できない。これは、かつて30余年前に、フィリピンがバターン半島の突端に軽水炉(米国ウェスチングハウス社製)を建設したとき、当時外務省原子力課長であった筆者が直接経験したことであるから間違いない(ちなみに、バターン原発計画は、工事半ばで、マルコス政権崩壊により頓挫してしまった)。日本はモノを売ってしまえば後は知らぬという態度ではなく、アフターサービスの良さにおいても定評のあるところで、そうした日本との技術協力を熱望する国も少なくなく、そうした国々の期待に応えるのも日本に課せられた重要な国際的責務と考えるべきである。

問題点(4)
原発輸出は核拡散を助長し、
NPT体制を弱体化させる?
「一国平和主義」に安住する日本

 さらに、もし日本が原発輸出から脱落すれば、日本以外で原発輸出能力を持った国はほとんどすべて核兵器国(特に仏、露、米、中国)だけとなる。ところが、これらの国は、核不拡散条約(NPT)上核兵器の製造・保持を公認されており、しかも自国の原子力活動に対する国際原子力機関(IAEA)の査察を受ける義務も経験もない。ロシアや中国は輸出先に厳しい査察義務や規制を課すことを避けるきらいがある。

 その点、被爆国として自ら非核に徹し、核不拡散義務を忠実に果たしつつ原子力平和利用活動を実践してきた日本は、一貫してNPT・IAEA体制を支えてきた、いわば模範生と自他共に認める存在である。実はこうした日本の国際的な貢献は、少数の専門家を除いて、一般国民には見えにくいので、日本国内ではほとんど理解されていないが、紛れもない事実であり、国際社会では広く知られていることである。

 そのような立場にある日本が世界の原発市場から欠落することは、原子力平和利用推進、核拡散防止の観点から、ひいては国際平和と安全保障の観点からも決して好ましくない状況といわねばならない。実は、米国の外交当局者や識者(アーミテージ元国務副長官など)が真剣に懸念し、憂慮しているのもまさにこの点である。一昨年夏、民主党・野田政権が「原発ゼロ」政策を決めかけたとき、米国政府などから強いブレーキがかかった背景には、このような裏の事情があったことをとくに指摘しておきたい。


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