2025年12月5日(金)

プーチンのロシア

2025年4月17日

 別の動画では、ロシアのインフルエンサーの女性が30万人以上のフォロワーに向けて中国語で語り掛け、「経験豊富な指導役による教えと、プロ仕様の最高の設備が整っている」と入隊を呼び掛けている。

 中国のSNS上では厳格な管理がなされており、政権にとって批判的なコメントや不都合な情報があればすぐに削除される。長期間、放置され、多くのアクセス数がついていることを考えると、中国当局による「お咎め」をすり抜けていることがわかる。

中国による後方支援か

 中国はロシアのウクライナ侵略については中立のスタンスを取っており、軍事面でも一定の距離を置いている。中国兵拘束の知らせを受け、中国外務省報道官は中国国民に対して、「武力紛争の地域に近づかないよう」さらには「いかなる形態の武力紛争への関与も避けるよう」呼びかけていることを強調した。

 捕虜となった中国兵2人は中国への帰国を希望している。ゼレンスキー氏は捕虜交換に応じる用意はあるが、その対象はロシアに拘束されているウクライナ兵のみであると条件をつけた。中国兵を関与させたプーチン政権への当てつけだろう。

 一方のロシア大統領府のペスコフ報道官は「ロシアは中国をウクライナとの戦争にひきずりこむつもりはない」と述べた。しかし、前線の兵士不足を外国人の傭兵で補填しているロシア軍にとって、中国兵の参加は渡りに船だ。

 ウクライナへの大規模侵攻からロシアの中国依存が顕著になっている。中国は大量の石油ガスをロシアから輸入しており、昨年の両国の貿易高は2448憶ドル(37兆円)と過去最高を記録した。ロシアへの西側の経済制裁が強化される中で、中国が間接的にロシアの継戦能力を支えているとの誹りは免れない。

 ウクライナの防衛戦略センターの専門家、ヴィクトル・ケヴリュク氏は先のウクライナメディア「LB.ua」に対し、ロシア軍に所属する中国軍派遣部隊の総数は「約1000人と想定されている」と指摘した。

 北大西洋条約機構(NATO)加盟国からは中国は、「紛争の決定的な支援者」だと非難されている。今回の騒動は今後、中国がロシアを後方支援しているという文脈で何度も取り沙汰されていくだろう。

 それだけに、批判をかわしたい中国政府は敏感になっており、各方面に、「客観的かつ公平な立場を正確に理解し、政治的な操作や誇張を控えるよう」求める事態にまで発展した。

 今後、ロシアとウクライナで停戦が成立した場合、軍事境界線の停戦監視をどうするのかという課題が出てくる。プーチン政権にとっては中国が停戦監視団を派遣すれば好条件となるが、ロシア軍への大量の中国兵参加の実態は、停戦監視団の構成資格をめぐって否定的な影響を与えるだろう。

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