2025年12月5日(金)

勝負の分かれ目

2025年4月30日

 NHKによれば、23年大会の決勝で日本が1点をリードした9回に、大谷選手が抑えとしてマウンドに上がり、当時エンジェルスでチームメートだった米国代表主将のマイク・トラウト選手から空振り三振を奪って優勝を決めた対決では、6球すべてが現行ルールでの「ピッチクロック」の制限を超えていた。

 NHKは「緊張感のある長い“間”が名勝負を演出する要因の1つとなったが、来年の大会では素早い勝負が求められる」と報じるが、大会ルールは常にメジャー主導で決まり、日本代表は与えられたルールに順応しながら3度の優勝を飾ってきた経緯がある。23年大会では、日本の準決勝の相手が当初は米国のはずだったが、大会公式ホームページが更新される混乱も招いた。

「不公平」感じるも、日本人選手は出場を希望

 26年大会も、米フロリダとテキサス、プエルトリコ、日本(東京ドーム)の4会場で開催される1次リーグや準々決勝、準決勝の組み合わせに抽選はなく、主催者によって振り分けられている。

 また、大会を通じての入場料や放映権料、スポンサー料やグッズ売り上げなどの収益はいったん主催者のもとへ入り、66%を主催者が取り、残りが分配される。最も盛り上がる日本が得られるのは13%に過ぎないと報じられている。日本代表は「常設化」し、WBC大会期間外の強化試合などの興行を打って収益化を図っているが、WBCでの「取り分」変更に向けた動きはみられない。

 過去には日本プロ野球選手会が日本代表のスポンサー料などが日本側に入らなければ不参加とする強硬な姿勢を見せたこともあるが、日本からメジャーへ移籍を目指す選手にとっては、WBCは実力をアピールするための「品評会」のような位置付けにもなっていて、不参加は現実的ではない。実際、23年大会の優勝メンバーからは山本由伸、松井裕樹、今永昇太、佐々木朗希の4投手がその後に海を渡り、今オフにはヤクルトの村上宗隆選手もメジャー挑戦を明言している。

日本は存在感のアピールを

 国際オリンピック委員会が08年を最後に五輪の実施種目から外れる中(※21年東京五輪、28年ロサンゼルス五輪は追加種目で採用)、メジャーが世界戦略の一環でWBCを国際主要大会へと成長させた面は否めない。一方で、日本をはじめとした参加国・地域があってこそ、大会は存在価値を生み出している。

 メジャーリーグはすでに、日本を含む世界中のトップ選手を吸い上げていくシステムを確立させている。このため、日本球界の空洞化も加速するが、せめて日本球界としてWBCには貢献度や成績に応じた報酬額のアップを勝ち取れないか。

 常に優勝候補に挙がり、多くのトップ選手が代表でプレーするためにコンディションを整えて大会に臨む日本の存在なくしてWBCは成り立たない。有効な交渉材料はあるはずだ。

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