2025年5月13日(火)

大阪 自由都市を支える“民の力”

2025年5月2日

大イベントだけでなく
日常を豊かに

──「グラングリーン大阪」は朝から多くの人で賑わっています。

グラングリーン大阪の芝生広場の噴水で遊ぶ子どもたち

村上 先行開発区域であるグランフロント大阪の計画段階では2期区域もビル群が立ち並ぶ計画でした。経済団体からの提言や有識者を交えた議論の中で、大規模な緑が必要との意思決定がなされ、大阪の一等地に公園ができることになりました。

 大規模ターミナル駅直結では「世界最大級の都市公園」と発信しています。ニューヨークのセントラルパークなどに比べると規模は小さいのですが、乗降客数で、世界トップクラスの大阪駅北側のすぐそばに、こうした緑豊かな都市公園があるのは世界的にも珍しいでしょう。

 村上さんからグラングリーンの運営について相談を受けた時、人を集める大イベントだけでなく、そもそも人が多い場所なので「日常の豊かな過ごし方が大切」と考えました。これは、放っておいても自然とできるものではなく〝しつらえ〟や〝仕掛け〟が必要なんです。そこで、山口県の長門湯本温泉観光まちづくりプロジェクトなどを共に進め、旧知の仲の水代さんを、村上さんに紹介することにしたんです。

水代 僭越ながら、コミュニティーづくりの大変さを村上さんに話しましたが、「誰にとっても『居場所』になるような場をつくりたい」という村上さんの解像度がとても高いと感じ、微力ながらこれまでの経験を生かし「やろう」と決意しました。

村上 昨年9月6日に先行まちびらきを迎えましたが、感動したことがあります。一人でいることが多く、まちに出かけることもそれほど多くないという方が、SNS上で「こんな僕にも、ここには居場所がある。それが嬉しい」と書き込んでいたのです。このまちづくりに関わってきた私たちにとって、これに勝る喜びはありません。自分のまちを好きになることは素晴らしいことです。

 またグラングリーン大阪には、観光客がいて、オフィスワーカーがいて、買い物客がいて、周囲の住宅街に住まう人もいる。つまり、ここには〝ありとあらゆる経済活動〟があり、様々な使い方がされる場所です。家族でも、恋人同士でも、一人でも気持ちよく過ごせる開けた大きい空間や落ち着いた小さい空間もあり、相当に考えてデザインしています。

 しかも、ここは公園ですが、ボール遊びなどの「行為」は「程度」でコントロールするようにしています。一般的な公園ではボール遊びなどの「行為」そのものを禁止していることがありますが、ここでは柔らかいボールで近づいて遊んでね、というように、「程度」でルールを作っています。周囲に迷惑をかけない程度に、思い思いの時間を過ごせるよう、看板(サイン類)の整備など、細かな仕掛けづくりをしています。もっと、多くの人の「日常」になるよう、これからも地域の人たちと一緒に、様々なことを行っていきたいですね。

水代 大事なことは、地域の人たちがまちづくりを手伝いたい、自分たちで決められる、意見できるといった〝関わりしろ〟や〝余白〟があることなのかもしれませんね。

村上 まさにその通りです。管理者任せではなく、いかに自分事化できるかがカギで、大阪の人が真に「やりたい」と思えるようなことを実現できる場所にしていきたいですね。


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