「もっとよくしたい」
地元の人たちの「関わり」
──泉さんの取り組んでいるなんば駅前の広場も、かつてと比べると大きく様変わりしました。
泉 なんば駅前の広場もグラングリーン同様、誰もが過ごせる「居場所」にしたいと思い、休憩用のベンチやテーブルを置いています。これは、「ようこそなんばへ。ちょっと腰掛けていってくださいね」というサインなんです。そこから、じっくりとなんばのまちを巡る。スタート地点になって、もう一回戻ってきて、ちょっと休んでまた巡る。しかも、そこは、誰にでも開放されている「居場所」であることが重要です。
やっぱりミナミのまちの魅力は、周辺一帯に歩行者のための商店街が面的に広がっていることでしょう。しかも、道頓堀やアメリカ村など個性的なまちが隣接している。ただ、難点は、屋外で休憩できる場所がほとんどないということでした。
しかし、そこにチャンスがある。なんばに人が増えれば増えるほど、滞在時間が増えれば増えるほど、経済活動・商業活動は活発になり、周囲の商店街や飲食店などが潤うようになるからです。
村上 でも、これを実現するには多くの年月と周囲への説得が必要だったのではないでしょうか。
泉 まさにその通りです。広場を整備し、歩行者天国にするというプロジェクトが始動したのは2008年ですから、すでに15年以上が経過しています。ただ、こうした息の長いプロジェクトで何より大切なのは、自分たちのまちを「もっとこうしたい」「もっとよくしたい」という思いに加えて、地元協議会の人たち、リーダー企業の南海電鉄との「関わり」が欠かせません。
人の空間を生み出すには、今あるタクシープールや店舗搬入のための荷さばき場所を移設する必要がありました。そのため、大阪市とその実現方策を共に探り、その後、町会や商店街、建物オーナーなど一軒一軒合意を取りました。開発ではなく既成市街地の再編なのでデベロッパーはおらず、自分たちでやるしかない。でも、地元協議会メンバーが納得し「これからちょっと荷さばきが不便になるけど、人が来たくなるまちにしよう」って言ったら「分かった」となる。結果的に地元の人が地元の人を口説くことで合意形成ができたんです。