2025年5月23日(金)

大阪 自由都市を支える“民の力”

2025年5月2日

 昨年9月に先行まちびらきした「グラングリーン大阪」はJR大阪駅北側のうめきたエリアに位置し、公園、レストラン、商業施設、ホテルなどが集まる新名所だ。大阪を拠点とする都市デザイン事務所ハートビートプラン代表の泉英明さん(53歳)は、「水都大阪」の事業推進や、タクシープールだったなんば駅前を地元の人たちと一緒に歩行者天国の広場として整備してきた。大林組大阪本店建築事業部の村上尚さん(44歳)はグラングリーン大阪のコンセプトづくりの段階から携わってきた。グッドモーニングス代表取締役の水代優さん(46歳)はグラングリーン大阪で行われる様々な交流会やイベントなど、ソフト面を充実させる。3人が考えるまちづくりとは?

グラングリーン大阪の芝生広場。後ろに見える「大屋根」はイベントスペースになる。取材日は日曜日。朝から家族連れなど多くの人で賑わっていた(WEDGE以下同)

編集部(以下、──)泉さんと村上さんは、環境工学や都市工学専攻で同じ大阪大学(大学院)出身ですね。

 私は東京出身なのですが、当時「環境工学」を学ぶことができる学科が阪大にしかなく、大阪に来ました。都市工学は、すごく単純化して言うと、人が豊かにどう暮らせるかを考える学問であり、その時代の都市の課題に応じてその力が問われます。日本では戦後の人口増加に伴い、道路や上下水道などインフラ整備を行ってきましたが、まさに都市工学の腕の見せどころでした。

泉 英明(いずみ・ひであき) ハートビートプラン代表取締役。
1971年東京都生まれ。大阪大学工学部環境工学科卒業。

村上 私はもともと、まちを歩いたり、広場や公園で人が楽しそうにしているところを見るのが好きでした。大学で勉強しているうちに、建築か都市工学かどちらかを選択しようと迷いましたが、大学で出会った恩師の村橋正武先生より都市の魅力を教えてもらい、最終的に都市工学を専攻しました。

村上 尚(むらかみ・なお) 大林組大阪本店建築事業部プロジェクト推進第一部副部長。1980年京都府生まれ。

 都市が成熟すれば、かつてのように無秩序な開発を規制するだけではまちは良くならない。個性ある豊かなまちはどう育むべきか、一人ひとりの想いをまちに昇華させたい。そこで考えたのが「プランニングの民主化」というアイデアです。

──全国でまちづくりに携わる水代さんも「プランニングの民主化」をいつも考えていますね。

水代 最初の頃、「まちづくりに関わってくれ」と言われても、全然ピンと来なかったんです。というのも、僕は、海の家やマルシェなど、「自分が楽しい」という思いからやっていましたから。でも、やればやるほど、「規制」にぶつかるんです。だからこそ、地域の人も巻き込んで、その規制を外して、地域の皆さんもハッピーになれるようなことがしたいと思うようになりました。でも、そのことが直接、まちづくりにつながるとは予想外のことでした。

水代 優(みずしろ・ゆう) good morni ngs代表取締役。1978年愛媛県生まれ。本誌連載『モノ語り』執筆中。

 大学卒業後、都市計画の事務所で行政マスタープランを作ったり、中心市街地活性化の取り組みをやったりと、10年間修業しました。でも、だんだん「担い手が本気にならないと進まない」と、モヤモヤしてきたんです。そんな時、NPO仲間と「OSAKA旅めがね」というディープ大阪まち歩きの事業化や「北浜テラス」で行った水辺空間のリノベーションも、やっぱり自分たち自身が面白いからやろう、そして共感を得たら社会に実装される、まさにプランニングの民主化を体験しました。

水代 道路を使うにしても、僕1人で言っても、何もできません。だから様々な人を巻き込むことが必要で、その点で泉さんから学んだことが4つあります。①「多様な視点で巻き込む」。商店街、役所、議員、住民、働く人など。②それらの人たちへ「話す順番」。③「丁寧な説明」。④「人を巻き込むための観察眼」です。僕が日本橋浜町で、「エリアマネジメント」を始めたきっかけも、そこにあります。


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