2025年5月18日(日)

インドから見た世界のリアル

2025年5月9日

 手段として使われたものが、現在情報がまだ十分に出ていないのであるが、戦闘機から射程の長いミサイルや爆弾を投射したようである。投射したものは、インドとロシアが共同開発した戦闘機から発射するタイプのブラモス巡航ミサイル(射程450~500キロメートル〈㎞〉)、英仏が共同開発したストーム・シャドウ巡航ミサイル(射程560㎞)と戦闘機から発射するフランス製のハンマー精密誘導爆弾(射程15~50㎞)のようである。

 これらの爆弾は、射程が長いので、国境から13~110㎞程度の距離にあるテロ組織の拠点を攻撃する際には、インドの戦闘機は、パキスタンの領空に侵入せずに攻撃したようである。インド側は、空爆そのもので、インド側の死者は全く出ていないことを発表しているが、使われている兵器の射程からすると、その可能性が高い。

 これに対し、パキスタンは、戦闘機を上げて迎撃した。パキスタンの戦闘機がパキスタンの領空内から長射程のミサイルを撃ち、それに対して、インドの戦闘機も、自国の領空を出ないで長射程のミサイルを発射して、撃ち合い、双方で125機の戦闘機が長射程のミサイルによる空中戦を展開したようである。

 インドは、パキスタンが発射したミサイルの多くは中国製(報道に出ているのはHQ-9BEとPL-15BVRミサイル)で、1発も命中しなかったと主張している。一方パキスタンは、中国製のJ-10戦闘機はすばらしく、インド空軍の最新鋭のフランス製戦闘機ラファールを3機、他のものも合わせると5機の戦闘機と25機のドローンを撃墜したと主張している。距離からしてまったく当たらなくてもおかしくないが、実態はよくわからない。

 ドローンというのは、インドがイスラエルと共同開発したスカイ・ストライカーだと思われる。今回、本格的に使用されたようだ。ミサイルのように敵に体当たりして爆発する自爆ドローンである。

 さらに、これとは他にパキスタンは、カシミールのパキスタン管理地域から長射程の火砲で越境砲撃を行い、インド側の街を砲撃したようである。

 双方に一定の死傷者が出たようであるが、どの人がテロリストで、どの人が民間人なのか、区別しづらいため、正確な状況は把握できない状態である。例えば、2002年パキスタンのカラチでテロリストに拉致され斬首されたアメリカ人ジャーナリストのダニエル・パール氏について、斬首した犯人がインドのミサイル攻撃で死亡したとの情報がでている。

今後の可能性

 この事態は今後どうなるだろうか。印パが戦闘をエスカレートさせ、大きな戦争になるだろうか。核戦争にまで発展するだろうか。パキスタンのシャリフ首相は「血の一滴まで復讐」すると演説した。本当にそうなるだろうか。過去の事例を見る限り、そのような可能性は低いと思われる。

 まず、大前提として、印パ双方が、大規模な戦争になることを望んでいない。インドは戦争をすることが可能であるが、今、経済的に大きなチャンスを迎えているのにそのチャンスを逃したくない。

 トランプ政権の対中関税によって、中国に工場を設置していた企業がインドへ工場を移す動きを加速させている。その最たる例がアップルである。アップルは、トランプ政権1期目の2017年以降、インドでの生産を始めていたのだが、今、トランプ政権2期目になって、その動きを加速化させ、26年末までにアメリカ向けのすべてのiPhoneをインドで行うことにした。

 インドとしては、このような事例を増やしたい。もし、今、インドで戦争が起き、インドは危険なところだという印象がついてしまったら、せっかくの投資のチャンスを失う。


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