Economist誌の同号には、台湾関連で 3 本の分析記事(1.台湾の貿易への中国による制約は大きな経済的コストをもたらし得る。2.中国は分裂し孤立した台湾の抵抗する意思を弱めることができるか。3.中国の軍事演習は台湾の封鎖を予示する)が掲載されており、この社説はその分析内容に依拠して書かれている。
この社説が警告することを日本も深刻に受け止めるべきであると考えている。今後の情勢の推移によっては、この社説が警告する事態が現出することになる可能性は少なからずあり、そうはならないようにどうするべきかを考えなければならない。
米国の中国に対する台湾侵攻を抑止する力は、この社説が言うようにトランプ政権下で弱くなっている。台湾に侵攻すれば、中国に 150%から 200%の関税を課すと言っていたが、もうすでに 145%の関税はかけられている。
取り除くべき米国の曖昧戦略
米国のいわゆる曖昧戦略が対中抑止策として現在の情勢下で十分に機能するかについては、今一度検討をするべきであろう。ただ代替案として何がありうるのかは難しい問題である。より曖昧性を取り除くような施策や言い方を工夫する必要が出てきているように思われる。
中国が台湾に侵攻せずに台湾へのグレイゾーン戦術として台湾海域での臨検と通関検査を沿岸警備隊が行う可能性は高い。その場合、米国がどう対応するかは明確ではない。そこでの不確実性を取り除くことも重要であろう。
台湾側には米国はきちんと抑止力を行使してくれるのかを疑問とする疑米論も頻繁に語られている。台湾内の分断は頼清徳総統の行政当局とそれに反対する勢力が支配的な議会の間で深まっており、疑米論とあいまって、台湾側の抵抗意思(これが最も重要な点である)を削いでいく恐れは現実性を帯びてきている。この Economist 誌の社説を重く受け止め、日米間および日米台で今後起こりうることについて率直な話し合いをする必要があろう。

