いかに現場を支援できるか
〝本気〟が試される日本
クリエーター人材を生み育て守るために、政府はいかに支援できるか。
文化庁は今年度から先述した人材育成事業を一旦中断する。その上で、アニメーション人材育成を行う教育機関と産業界の現場がプラットフォームを形成して課題を共有したり、業務上求められる標準的なスキルを可視化することで、共通の教育インフラを実装するための取り組みを開始する。
前出の是永氏は「今、真に求められる施策は何なのか、現場からの声を第一に、彼らが必要とする支援を模索し続ける」と説明する。同じく前出の釋迦郡氏は「民間の団体が技術継承やスキルの資格化を図るのではなく、国が主導することの意義は大きい」と賛同した。
もちろん、それで支援が十分なわけではない。
同社のアベ氏は、「例えば、ある作品が再放送されたときに、私たちアニメーターには単価以外の支払いは発生しないが、声優には再放送分のギャラが入る仕組みになっている。そうしたところが見直されれば、中小企業であっても人材育成の費用を今よりも捻出することができる」と語気を強める。クリエーターの収益構造を、この国はもう一度考え直す必要がありそうだ。
釋迦郡氏が続ける。
「この国が本気でコンテンツ産業を〝基幹産業〟にするのであれば、目の前の仕事に追われ、自分が描いた絵の出来栄えに納得がいかない状態でも『納品しなければ食べていけないから』と仕事を続けるアニメーターがいるという現実を踏まえ、この状況を改善してほしい」
JAniCAがまとめている「アニメーション制作者実態調査」には、アニメーターの赤裸々な声が掲載されている。
「報酬が少ないので生きるだけで精一杯。会社が人件費を捻出するのは難しいので、行政がアニメ業界の価値を改めて考え直し支援してほしい」
「このままでは日本の文化であるアニメーションが廃れていくように感じる。業界の在り方、クリエイター一人一人を見つめた環境づくりが、業界の急務である」
クリエーター人材は〝日本の宝〟でもある。コンテンツ産業の未来をどう描き、いかに現場が恩恵を実感できる形で支援できるか。この国の〝本気〟が試されている。

