支えるのはIT連携
クイックコマースの即時配達が可能となる背景には、一連の工程がテクノロジーによって自動化されている点がある。ユーザーがスマートフォンのアプリから注文を行うと、その情報はクラウド上のシステムに即座に送信され、複数のダークストア(都市内に点在している小型の倉庫)の中から最適な拠点が自動的に選ばれる。選ばれた倉庫では、在庫データと連携したシステムによりピッキング対象の商品が即時に指示され、スタッフが効率的に集荷を行う。
同時に、倉庫周辺で待機している複数の配達員の中から、所要時間や現在地をもとに最適な人員が自動的に割り当てられ、配達ルートの最適化もリアルタイムで行われる。
これら一連のプロセスは、すべてスタッフや配達員がそれぞれのスマートフォン上で把握・操作できるようになっている。たとえば、倉庫スタッフはどの商品をピックアップすればよいか、どの棚にあるかをアプリ上で確認でき、配達員も「どこへ」「何を」「どのルートで」届けるかをスマホから指示される仕組みだ。自分のすべきことをすべてアプリで即座に把握できるため、作業が迷わずスムーズに進み、全体のスピードと正確性が保たれている。
急成長の影にある課題と規制の動き
一方で、クイックコマースの急拡大には負の側面も指摘されている。過剰な割引競争による収益圧迫、配達スタッフの過酷な労働条件、環境負荷の高い配送体制などだ。こうした問題を背景に、持続可能性への懸念も高まっている。
加えて、クイックコマースの拡大が伝統的な小規模小売店、いわゆるキラナストアの経営を脅かしているという懸念も強まっている。全インド消費財流通業者連盟(AICPDF)は、BlinkitやZeptoといった事業者による過剰な割引や独占的な販売契約が、地域の流通構造を壊していると指摘。約20万軒のキラナストアが閉店に追い込まれたとの報告もあり、影響は深刻だ。
こうした状況に対し、AICPDFはインド競争委員会(CCI)に対して正式な調査を要請し、日用消費財(FMCG)製品に対して最大希望小売価格(MRP)の10%、非FMCG製品には2〜3%の価格下限を設けるよう提案している。議会常任委員会もCCIに対し、小規模小売業者を保護するための措置に関する報告を求めるなど、制度的な対応も進められようとしている。
