米世論はトランプの交渉をどうみているのか?
英誌エコノミストと調査会社ユーガブの全国共同世論調査(2025年5月9~12日実施)の結果をみてみよう。同調査によれば、「ドナルド・トランプは優れた交渉者である」という記述に対して、42%(「強く」と「やや」の合算)が賛成と回答し、44%(同)が反対と答え、2ポイント差であるが、反対が賛成を上回った。
また、「ドナルド・トランプは米国の貿易政策に関して明確な計画を持っている」という記述については、39%が「はい」、45%が「いいえ」と答え、こちらは「いいえ」が「はい」を6ポイント上回った。
さらに、「米国は貿易戦争に勝つか、負けるか」という質問に対しては、32%が「勝つ」、40%が「負ける」と回答し、貿易戦争に関して、米国民が悲観的であることを示した。
『取引の芸術(The Art of the Deal)』の著者で、「ディールの達人」のように見られているトランプだが、世論調査からみれば、米国民の多数は、どちらかと言えば、彼を優れた交渉者として見ておらず、貿易政策に関して気まぐれな対応をして、彼が仕掛けた貿易戦争に米国は敗れると考えている。
一方で、世論に反して、トランプ自身は貿易戦争で勝者になり得ると信じている。ピーターソン国際経済研究所所長のアダム・ポーゼン氏は、『フォーリン・アフェアーズ リポート』(2025 No.5)の中で、トランプは、対中貿易赤字を抱える米国は、中国からより多くの商品やサービスを輸入しているので、自身の立場が強いとみていると指摘した。そこで、トランプは145%の高関税率を中国からの輸入品にかけて、米国に有利なディールを引き出そうとした。
