パナソニック、資生堂、オムロン、マツダ、コニカミノルタ、ルネサスエレクトロニクスなど、黒字でも希望退職者を募集してリストラを進める会社が頻出している。このうちには、マツダをはじめトランプ関税の影響により業績悪化が確実に予想される会社もある。来期に赤字になるなら、今のうちからリストラしておくというのは会社としては当然だろう。

日産は、将来の赤字が見込まれていたもののリストラをせず2024年度は6708億円という巨額の赤字となった。これは1999年度のカルロス・ゴーン社長の発表した6843憶円の赤字に次ぐものだ(「日産 決算会見 6708億円の最終赤字 2027年度までに2万人削減へ」NHKニュース2025年5月13日)。
ここで議論したいのは、別に将来の赤字が予想されている訳でもなく、現在黒字なのにリストラする会社についてだ。報道には黒字リストラは意外だというニュアンスが含まれている。しかし、会社の立場として、会社全体の業績の黒字赤字と、解雇リストラをするかしないかは、本来関係性が薄い。
会社が人を雇う理由
会社がなぜ人を雇うかと言えば、その人を雇うことによってその人に払う給与以上の収益が得られるからだ。会社の立場からすれば、収益が得られるなら雇うし、得られなければ解雇したいというだけだ。
経済学では、賃金は労働の限界生産物で決まるという。限界生産物とは、その人を雇うことによって得られる会社の追加的な収益である。
賃金は分かるが、限界生産物は分からない。もちろん、工場で生産している人やお店で働いている人、営業の人の限界生産物は、だいたいは分かるだろう。しかし、内部管理や戦略を担うホワイトカラーや研究者、技術者の限界生産物はなかなか分からない。
会社が赤字だろうが黒字だろうが、会社は、その限界生産物が賃金以下の人は解雇したい。これは労働者の能力とは必ずしも関係がない。
売れない車を他の人の3倍作れる人は却って会社の赤字を増やすだけかもしれない。労働者の責任ではなく、売れない車を作らせている経営者の責任である。誰の責任かはともかくとして、会社は車を作るのは止めるために解雇リストラをする必要がある。