2025年12月5日(金)

経済の常識 VS 政策の非常識

2025年5月21日

景気が良い時こそリストラすべきか

 転職が賃金を上げるという事例は霞が関の官僚がコンサル業界に行くといった例から多々あるように感じるが、統計では転職で賃金が低下するようだ。第一生命経済研究所主任エコノミストの星野卓也氏の「高圧経済が労働市場にもたらした好影響」(図表4-2.原田泰・飯田泰之編『高圧経済とは何か』金融財政事情研究会、2023年)によると、同一年齢の長期勤続者に対する転職者の賃金の比率は、アベノミクスの景気拡大期では高くはなったが、まだに1を下回っている。25~34歳では0.9以上1以下だが、45~59歳では0.7程度である。つまり、現在でも転職によって10%から30%賃金が下がる場合が多いようだ。

 また、青山学院大学法学部の佐藤綾野教授の「高圧経済が生産性に与える影響」(原田・飯田前掲書)によると、雇用の流動化は賃金を上げる効果があるが、雇用状況の良い時には雇用の流動化が促進されるという。つまり、雇用リストラは景気の良いときにした方が良いということにもなる訳だ。

 また、希望退職とは、割増退職金と交換に退職を受け入れるということだ。労働者にとってみれば、このまま会社にいた場合に得られる賃金と転職先の賃金と割増退職金を比較して退職を希望するかを選ぶ。転職先の賃金が高ければ割増退職金は得になる。ただし、そういう場合が少ないから黒字リストラが人々の関心を集めるのだろう。

 それでも景気の良い時の方が転職先の賃金低下は少ない。であれば、ますます、リストラは黒字会社の多い景気の拡大している時にした方が良いのでないか。

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