2025年6月17日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年6月6日

 5月18日のルーマニアの大統領選挙の決選投票では、親欧州連合(EU)の候補であるニクショル・ダン(ブカレスト市長)が逆転勝利を勝ち取り、ルーマニアがEUの主流にとどまることが確認されたが、Economist誌がその経過と今後の課題を解説している。要旨は次の通り。

ルーマニア大統領選挙の決選投票でダン氏が勝利した(AP/アフロ)

 5月18日のルーマニアの大統領選挙では極右AUR(ルーマニア統一同盟)のジョルジェ・シミオン(MAGA一派が支持する扇動者)がパリで教育を受けた数学者でブカレスト市長のニクショル・ダンと対決した。これはリベラルなコスモポリタンとポピュリストのナショナリストの戦いという民主政治の典型のようだった。

 2週間前の一回目の投票ではシミオンが41%の票を得て勝った。ダンは21%だった。ダンが勝てばルーマニアがEUの主流にとどまることを再確認することになる。シミオンが勝てば、EUを破損させようとしているポピュリストの列に加わることになるはずだった。

 しかし、ダンはシミオンを支持しなかった有権者の大方を勝ち取り、また、ダンの勝ちと広く認められたTV討論によってその差は更に縮むことになった。結局、ダンは手際よく成功を収めた。

 5月18日、選挙管理委員会はダンが54%、シミオンは46%の得票だったことを発表した。投票率はルーマニアの大統領選挙としては記録的に大きかった。400万人に上るルーマニアのディアスポラ(在外居住者)が大挙投票したが、一回目の投票と違って、彼らが大きくシミオンの支持に回ることはなかった。

 昨年11月に行われた一回目の投票では、別の極右のポピュリストが勝ったが、この選挙を憲法裁判所が無効としたことに対する怒りがシミオンに味方した。その支持は消え去ったようである。シミオンは当初敗北を認めることを拒否したが、19日の朝になって、彼はダンを祝福し、ダンが「ルーマニア国民の選択」だと述べた。


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