停電の原因は何か
欧州の送電網管理者は、スペインの当事者を含む委員会を立ち上げ調査に乗り出した。停電の原因は調査中だが、電力システムが崩壊に至る当日の出来事を次のように時系列で整理している。
・4月28日 12:32:57からの20秒間
スペイン南部において異なる発電設備が送電網から脱落(オフラインにトリップ)。合計220万kWがトリップと推定。ポルトガルとフランスではトリップは観測されなかったが、電圧の上昇と周波数の低下がスペインとポルトガルで観測された。
・12:33:18から12:33:21にかけて周波数の低下が続き、(通常50ヘルツが)48ヘルツに低下。設備保護のためスペインとポルトガル間で交流送電自動遮断装置が稼働。
・12:33:21
スペインとフランス間の交流送電自動遮断装置が稼働。
・12:33:24
イベリア半島の電力システムが完全に崩壊。スペインとフランス間の直流高圧送電システム停止。
最初の問題を引き起こした220万kWの脱落がなぜ起きたのか、調査が続いている。複数のエキスパートは再エネからの発電が停電の拡大に影響したとみている。
なぜ再エネで停電が起きるのか
最初に脱落した220万kWの電源が何であったかにかかわらず、複数のレポートは日照と風況に恵まれたスペインで大量に導入されている再エネ設備(図-1)が大規模停電を引き起こしたと指摘している。
例えば、MIT Technology Reviewは、慣性力を持たない再エネ電源が停電拡大の原因と推測している。同期電源と呼ばれる火力、原子力、水力発電設備は、発電機の中の磁石を回転させて発電している。一方、太陽光、風力設備はインバーターを利用し直流電源を交流電源に変換している。
同期電源は、送電網の中でどこかの発電設備がトリップした場合に、慣性により周波数の変動を防ぐが、インバーターを利用する電源は、周波数の変動が発生すると、設備を守るため送電網から切り離す装置が働く。
今回の停電では、停電発生時にスペイン国内に電力を供給していた設備2600万kW(図-2)の内、1500万kWが瞬時にトリップしたが、その引き金は太陽光、風力発電設備と推測されている。
5月23日付け英国紙テレグラフは、停電の原因にスペインの送電網管理者が実施していた再エネ電源の受け入れ上限を試す試験があったと報じたが、同時に再エネ電源設備に対し貧弱な送電網の問題もあると指摘した。


