スペイン大停電が巻き起こした論争
4月28日、スペイン南西部から発生した停電は、ポルトガル、フランス南部のスペインとの国境地帯に広がる大停電になった。
幸い、1日弱で全面復旧したが、電子決済の時代に現金を持ち歩かない人が恐怖を体験することになった。スマホがあれば、コンビニ、レストランから駅の改札まで困ることはない。しかし、電気があれば、のはなしだ。
停電発生時のスペインにいた米国人旅行者は現金を40ユーロ(約6000円)しか持っておらず、停電がいつ終わるか分からない中で恐怖を感じた。現金を持っていた人の中には開いている店を見つけ電池式のラジオを買い、何が起こっているのか把握しようとした人もいた。
停止した100本の電車から3万5000人が救出されたと伝えられたが、見知らぬ土地で現金を持っていない乗客は不安だっただろう。
電気がなければ、何もできない時代になった。停電の備えは懐中電灯と携帯ラジオだけで済む時代ではない。
米国カリフォルニア州の地元放送局がまとめた停電への備えが参考になる(表-1)。現金、大切な情報を書き留めたメモなど常に準備が必要だ。
スペインでの大停電の原因は、まだ分かっていない。変電所で220万キロワット(kW)の供給が失われたのが発端だが、なぜ供給が喪失したのか調査が続いている。
原因が分からない中で、ちょっとした論争が起きている。原因として太陽光発電を中心とする再生可能エネルギー(再エネ)設備の特性があるとの指摘に対し、そうではないとのスペイン政府など再エネ推進派の反論がある。
5月下旬にスクープ記事も出た。スペインの送電管理者が、27年からの原子力発電所停止に備え再エネ導入量をさらに増やす実験を実施し、停電の引き金になったとの報道だ。
現在のスペイン労働党政権は将来の再エネ100%を掲げているので、停電をめぐる議論が、再エネから原子力発電の必要性まで、与野党間の論争にも発展している。米国のエネルギー長官、上院議員ら他国からも援護射撃らしきコメントも発せられている。
さらに、サイバー攻撃を受けたのではないかとの見方も出ている。企業を狙うサイバー攻撃はランサムウエアでデータを人質に取り身代金を要求するのが常だが、なぜ発電設備を攻撃するのだろうか。

