2025年12月5日(金)

都市vs地方 

2025年6月4日

 そこで、全国47都道府県について各都道府県内総所得がどれだけ民間消費支出として使われているかを21年の「県民経済計算」を使って確認しよう。もし消費性向が大きければ、それは民間経済のお金の使いっぷりの気前の良さを示しているといえ、「支出が支出を呼ぶ」経済循環が早まることになる。

 表1にはこれまで万博やオリンピックが行われてきた主要な地域である東京、愛知、大阪の消費性向を示した。

 これを見ると、3大都府県では大阪府の消費性向が最も高く、経済効果が出やすい傾向にあることが分かる。すなわち、公共事業で生産、雇用が誘発され100万円分の県民所得が得られた場合、東京都ではそのうち40万円、愛知県では44.2万円消費されるが、大阪府では51.5万円と所得の半分以上を消費に回す計算になる。

 もし、万博に公共事業から誘発される経済効果を求めるのであれば、この3大都府県では「大阪府での開催」が最も効果があることになる。「江戸っ子は宵越しの銭は持たない」(お金は気前よく使う)という言葉があるが、実は浪速っ子の方が消費性向は高かったわけである。

今後の国家的イベントの候補地は?

 ただし、大阪府よりも消費性向が大きな道府県は他にも存在する。表2は同じ県民経済計算から大阪府よりも消費性向が高い地方をリストアップしたものである。最も消費性向の高い県は奈良県で0.661であった。

 この数字だけに基づけば、経済効果目当てに例えば「奈良古代歴史博覧会」なども構想できるかもしれない。表2では、かつて万博やオリンピックなどの国家的イベントのあった県として沖縄県(海洋博)のほか北海道・長野県(ともに冬季五輪)がランクインしている。

 もし、この表だけに基づいて今後、国家的イベントの候補地を考えるのであれば、消費性向の高さ、県民総所得に見られる一定以上の地域の経済規模、関西圏や関東圏など特定の地域に偏らない等の観点から、7位の福岡県(九州地方)、22位の宮城県(東北地方)も検討の対象になりうるかもしれない。

統計からみる食の大阪

 大阪の社会・文化に視点を移してみたい。大阪社会を表す様々な言葉の中に、「食い倒れ」「笑いの本場」などがあげられる。はじめに食文化に焦点を当てる。大阪万博でもフードコートの一部で高級食材が売られていることが話題となっている。

 大阪人のソウルフードとしては「お好み焼き・たこ焼き」を外しては語れない。全国の事業所を調査した「経済センサス・基礎調査」(2021)によれば、「お好み焼き・焼きそば・たこ焼き店」の店舗数は、東京都の942軒に対し大阪府は2048軒と倍以上を誇っている。

 仮に大阪府が「都」となり、お好み焼きがローカルな「ソウルフード」から「キャピタルで食べられているおしゃれな都会料理」と認識されると、各地にお好み焼きブームが起こり、ファストフード店並みにお好み焼き店の開店ラッシュが起きれば面白い。ちなみに今では全国あまねく展開されている某有名ハンバーガーショップの第1号店は、首都東京の銀座から始まったことは有名な話である。

 そうなれば訪日外国人も「日本の代表的料理」のひとつとしてお好み焼きを食べるかもしれない。「いくら何でも、外国人が日本に来てお好み焼きは食べないだろう。やはり人気の料理は寿司や刺身では」と思う方も多いであろう。しかし、観光庁の行う訪日外国人に対するアンケートである「インバウンド消費動向調査」の結果では、満足した料理の回答としては、寿司、刺身などの魚料理よりも、ラーメンの方が上位である


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