大阪の薄味がもたらす健康効果
お好み焼きにはソースやマヨネーズが欠かせない。そこでもし「大阪食のお好み焼きが全国に広まれば、国民の食塩摂取が増加し、高血圧や脳卒中が増えてしまうのでは」と心配する人もいるかもしれない。しかし大阪・関西の料理は全てがお好み焼きというわけではない。関西風の味付けは薄味であることも特徴である。
厚生労働省が行った地域ブロック別の1日の食塩摂取量の調査結果を見てみよう。図2を見ると京都府、大阪府、兵庫県が含まれる近畿Ⅰブロックは九州北部を表す北九州ブロックとともに9.3グラム(g)/日と実際に食塩摂取量が少ないことが分かる。特に味付けの濃いといわれる東北地方(10.7g/日)との差は歴然としている。
厚労省が国民の健康増進のために提唱している「健康日本21(第3次)」における食塩の摂取量の目標値は、7g/日である。筆者らの研究では食塩の1日あたり平均摂取量を1g減らすことで、人口10万人当たりの脳血管疾患の死亡率8.6人減らすことが出来るとの試算結果を得ている。関西風味付けが全国に広まれることで、国民の健康に及ぼす効果も期待できるかもしれない。
大阪のお笑い文化志向を見える化
最後に、大阪の「お笑い文化」についてみてみよう。吉本興業の存在をはじめとして、大阪の人たちはお笑い好きである印象を受ける。
24年「家計調査」から一般的な家計の支出金額を通じて、お笑い・演芸文化への志向を探ってみよう。家計調査では、直接にお笑い演芸を楽しむための金額の内訳は示されていないが、大枠として「映画、演劇、コンサート、落語などの入場料」支出が「映画・演劇等入場料」として得られる。
表4を見ると、近畿地方は東京の9914円よりは少ないものの全国では2位の8327円支出されている。この値を「野球、サッカーなどの観覧料」が含まれる「スポーツ観覧料」で除した値をC欄に示した。近畿地方は「映画・演劇等入場料」/「スポーツ観覧料」比率が関東地方より高いことがわかる。関西はお笑い演芸を含む映画・演劇等入場料に志向が大きいことが伺われる。
関西人はお笑い演芸を含む映画・演劇等入場料ばかりに傾倒しているわけではない。表4には「美術館、博物館、動物園、社寺などの文化施設の入場料、拝観料」を表す「文化施設入場料」を示した。近畿地方は寺社・仏閣などが多いためか2933円と全国最高額を示している。関西人がお笑い以外に文化への志向もうかがえる結果である。
なお表4では東北地方の演芸/スポーツ観覧料比率は近畿と同程度に高いことは意外な結果であった。また、沖縄地方はプロ野球もサッカーJ1チームもないため、スポーツ観覧料が小さく出てしまう効果が出ているといえる。
大阪の地方創生
大阪万博の経済効果の検証と大阪で万博が実施される意味などを通じて大阪経済の位置づけを検討した。さらに食の街大阪の実態も統計的に確認した。経済的な指標から「商売の街大阪」の存在を改めて認識させられる結果となったが、それ以外の食文化、お笑い文化からも大阪のインパクトを感じさせられた。
地方創生が叫ばれて久しい。大阪に限らず、地方・地域は「リトル東京」を目指すのではなく、そのエリアの経済的な特徴や文化を活かす方向を強めれば、全国相互にまるで国際貿易のように交換の互恵的利益を発展させることができよう。


