米国がやらないなら、日欧が主導し代替的貿易紛争解決メカニズムを作る必要がある。なお現在の米国の一方的「相互」関税下では日米EUの同提訴は難しいだろう。
代替生産地の可能性
第二に、レアアースの輸出規制の結果、代替生産地発掘と開発、さらには、レアアース使用削減努力が進み、需要量自体が減り中国の独占性が減殺されることだ。これは、10年に正に日本がやったことであり、一定程度成果を上げ中国側の規制緩和への動きを促した面がある。
なお、一説によれば、10年時点では、中国は世界のレアアース生産の93%をコントロールし、重希土類についてはその割合は99%以上だったが、その後、カリフォルニア州や豪州での生産が急増し、14年までには中国のシェアは90%以上から約70%に落ちたとの分析もある。実際、国際エネルギー機関(IEA)統計によれば、現在中国のレアアース生産は世界の61%で、精錬は92%だ。
この記事の焦点であるネオジムは、生産の97%は中国、2%がインドと、中国の独占率は非常に高い。ただし、4月4日に中国が発表したレアアース新規輸出規制の対象には、ネオジムは含まれていない。この記事は将来の可能性に備えて、今から手を打つべしとの警鐘を鳴らすものだ。
ただ、中国の世界一のレアアース埋蔵量(世界全体の37%)と精錬の容易さ(環境対策の必要性の低さ)から見ると、レアアースに関する闘いは米国単独ではやれない。現在「相互」関税他で虐めているベトナム(カッコ内はレアアース埋蔵量の世界比率18%)、ブラジル(18%)、インド(6%)、豪州との共同戦線が、開発・生産でも貿易紛争解決でも必要だ。

