米中の関税戦争の休戦が合意され、市場が肯定的に反応したが、2025年5月13日付のフィナンシャル・タイムズ 紙社説は、90日以内に交渉がまとまる保証はなく楽観できないと論じている。

5月12日に発表された米中貿易戦争の3カ月間の緊張緩和は、世界経済にとり間違いなく安堵の材料である。双方は、関税を115%削減することで合意し、貿易紛争を解決するための「協議メカニズム」を設立した。
世界の2大経済大国間の関係改善は、国内の家計、企業、金融市場だけでなく、対立に巻き込まれた国々にも望みを与えるだろう。しかし、楽観は禁物だ。
高関税による威嚇は、トランプが中国から譲歩を引き出すことを可能にした。米国株式市場は、5月12日には、米国株と中国株が上昇し、ドルは急騰し、金は暴落した。しかし、投資家は短期的な事象に惑わされず、より大きな構図に注目すべきだ。
まず、米中間の関税率は、歴史的に見ればまだ高い。中国からの商品に対する米国の実効関税率は現在約40%で、これはトランプの2期目が始まる前よりも高く、ホワイトハウスはまだ分野別関税を検討している。両国間の当初の法外な関税率による経済的打撃の影響もこれから出て来る。
第二に、3カ月の停戦が永続的な休戦につながる保証はない。米中間の貿易と投資は、関税率が不安定である限り抑制されたままであろう。
米中間の交渉が今後どのように進展するかを予想する際にも、懐疑的な見方が正当化される。トランプは以前から、米国の対中貿易赤字に不満を抱いてきた。しかし、それは中国の供給過剰と米国の需要過剰という根本的な経済不均衡に起因するものであるため、進行中の協議でこの問題が是正されるかは不明だ。トランプは、90日以内に交渉がまとまらなければ関税を引き上げると述べている。
最後に、投資家は英国や中国との取引から多くを推測することに慎重であるべきである。トランプの関税率の譲歩は、最終的に米国の関税を選挙戦の公約である各国に対し10から20%、中国に対し60%の関税率に近づけるという見方が浮上している。
ここ数週間の関税に関する紆余曲折を考えると、市場がこの結果を良い展開と考えるのも無理はない。しかしそれは、大統領就任前は、ほとんどのアナリストにとり最悪のシナリオであった。にもかかわらず、投資家はトランプが描くより悪くない結果をポジティブなものとして受け入れているようだ。