2025年12月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年6月10日

 議会とトランプ政権は、次の構造的挑戦に対応すべきだ。第一に、大統領は米国生産者が中国企業と対等に競争できる競争条件を作る必要がある。中国は低賃金で国営企業等の不公平慣行があり、磁石を低価格で供給できる。

 バイデン政権は、2026年以降中国のネオジム磁石に25%関税をかけることを決めた。トランプは追加的、継続的関税を中国産磁石に賦課すべきだ。

 第二に、トランプは、中国から独立したネオジム磁石企業へ大規模に投資すべきだ。米国鉱物生産増加に関する3月20日付大統領令は強力な第一歩で、国防省等はその実施のため必要な資金を提供すべきだ。

 第三に、米国の磁石生産労働力は空洞化している。磁石製造労働力を再構築するための具体的法的基盤が必要だ。

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日欧が主導すべきWTOの活用

 中国のレアアース輸出枠等の規制については、12 年3月に日米欧州連合(EU)で世界貿易機関(WTO)に提訴し14年WTO上級委員会で日米EU の主張が認められ、その後中国政府は輸出規制を撤廃した。ここから我々が学ぶべき教訓は何だろうか。

 まず、中国との関係ではWTO提訴は有効だということだ。12年の提訴では日米EUが足並みをそろえたことも大きい。実際、WTOで敗訴した中国は提訴の対象となった輸出規制措置を履行期間内に撤廃している。貿易問題を政治問題化せず解決するとのWTO紛争解決手続きの本来の目的は達成されていた。

 しかし、現在米国の対応の結果WTOの紛争解決手続きは麻痺している。米国は中国のWTO「悪用」を理由としているが、結果としWTOで我々が有効に使えるものも使えなくなっているのは問題だ。


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